カレッジマネジメント221号
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8リクルート カレッジマネジメント221 / Mar. - Apr. 2020本指針はまず、学長、副学長、学部長、学科長などのマネジメント層にご参照頂きたい。運営の責任者が当事者意識を持たなければ、大学全体のシステムとして一体性・整合性のある体制を構築することはできない。1年間の特別委を通じてとりわけ印象に残っているのは、「執行部からFD・SDやIRの部署あるいは担当者に『教学マネジメントを確立せよ』との指示がおりてきたら、『責任者はあなたでしょ』と言えるよう、本指針が想定する主たる対象を明記してほしい」との某委員の発言だった。言うまでもなく、教学マネジメントを確立するうえで、学長の果たす役割は決定的に重要である。しかしながら、一人ひとりの教職員が組織の一員としてその意義を理解し自発的に取り組まなければ、 実質化は難しい。従って、全ての大学構成員にも精読を期待する。また、作成に当たっては、学生や学費負担者、入学希望者、地域社会や産業界など広く大学に関わる関係者の理解も得られるような記述を旨とした。1月の大学分科会では、複数の委員から「非常に良くできている」、「丁寧な議論の成果」といった極めて好意的な意見が寄せられると同時に、「教学マネジメントは本来、それぞれの大学が取り組むべきであり、このような指針である種の正解が示されると、自らの試行錯誤によって最適の解を考えるというプロセスを取らなくなる大学が出てくるのではないか」、「良く整理され表まで付いているので、結局各種の評価に利用されてしまうのではないか」、「教学マネジメントは推進すればするほど過重な負担につながり、教職員の不安を増大させるのではないか」等々、いくつかの懸念も表明された。言わずもがなではあるが、別紙の表に項目化されていることを実行しておけばよいといった対応は、本指針の目指すところからはほど遠い。当日のコメントのうち、私が今後の課題としてぜひ検討すべきだと感じたのは、学生が関与する仕組み作りの重要性である。別表には情報収集等の例として「学生へのアンケート調査を通じた収集」を挙げているが、自律的学修者の育成を掲げるからには、学生自身が大学の管理運営・内部質保証に参画する体制構築が求められる。それなしに学生が主役となる教育への変革は成し遂げられない。教学マネジメントを確立するうえで、重要な学長の役割「議論の進め方について」通称“日比谷メモ”「グランドデザイン答申」*1の取りまとめに至る中央教育審議会での議論や、これまでの本委員会における議論を踏まえ、本特別委員会のミッションである「教学マネジメントに係る指針」の性格や、本特別委員会の議論の範囲については以下のとおりと整理し、今後の議論を進めることとしたい。1.「教学マネジメントに係る指針」の性格について平成17年の「我が国の高等教育の将来像答申」*2の取りまとめ以降、「高等教育計画の策定と各種規制」の時代から「将来像の提示と政策誘導」の時代へと移行する中で、各機関における自主的な改善努力が促されてきた。大学教育の質の保証についても、これまで多くの積極的な改善の努力が進められているが、改善に真剣に取り組む大学と改善の努力が不十分な大学とに二極化しているという指摘もあり、大学全体として十分な信頼が得られているとは言い難いという認識が「グランドデザイン答申」で示されている。 中央教育審議会がまとめる本指針は、教学マネジメントは各大学が自らの責任において、各大学の事情に合致した形で構築すべきものであることを前提としたうえで、過去の答申等で示されている大学教育改革に関する手法等を、教学マネジメントの確立及び学修成果の可視化・情報公表の促進という観点から再整理し、各大学の教学面での改善・改革に係る取組を促すために作成するものである(前回資料2参照)。このため、本指針は、これまで改革に真剣に取り組み、先導的な成果を生み出してきた大学の取組を一定の型にはめることを意図するものではなく、改革が必ずしも学修者の目線に立ったものとなっていない大学や、改革が十分な成果に結びついていない大学等に、大学教育の質の保証の観点から確実に実施されることが必要とされる水準(ただし、これは難易度が低いということを直ちに意味しない)で、各大学の4444取組に当たっての留意点などについてわかりやすい形で示し、その改革の促進に主眼を置くことがふさわしいものと考える。その観点から、本指針は、国公私立といった設置者の枠にかかわらず、規模や学部構成、経営資源等において多様な大学等に共通する内容として作成され、そして、すべての教員、職員及び関係する者に必要性・重要性が共通に理解され、受け止められるものとする必要がある。*1 「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(平成30年11月中央教育審議会)*2 「我が国の高等教育の将来像(答申)」(平成17年1月中央教育審議会)教学マネジメント特別委員会における議論の進め方について資料2中央教育審議会大学分科会教学マネジメント特別委員会 (第3回) H31.2.13座長 日比谷 潤子
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