カレッジマネジメント221号
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9リクルート カレッジマネジメント221 / Mar. - Apr. 2020毎年卒業式が終わると、学生から同窓生になったばかりの数百名が、キャンパスのあちこちで学位記を手に、単独あるいは友人や教員と一緒に写真撮影に興じている。満面の笑顔は何度見てもうれしいものだが、大学を巣立つに当たって喜びを感じるのはなぜだろうか。就職先が決まったから、大学院の入学者選抜に合格したから等々、様々な答えが想定される。日英両語を公式言語とする国際基督教大学では1953年の開学以来、卒業式の式次第も二言語併記で作っており、日本語は卒業式、英語はCommencementと記載する。よく知られている通り、後者の意味は「始まり」である。卒業とは、何の始まりなのだろうか。社会人生活の第一歩はもちろん大きな節目には違いないが、より根源的なのは、自律的学修者としての旅路を開始することではないか。何をどのように学び身につけたのか、その結果何ができるようになったのか、換言すれば、本稿を通じて強調してきたDPの定める目標を達成できたのかを冷静に自己評価し、確かな手応えをもって成果を説明したうえで、今後いかに生きていくのかを展望できる人に成長していれば、大学時代に固めた基盤を支えに、生涯にわたって主体的・創造的に学び続けられる。このような人々を生み出すのが「学修者本位の教育」であり、教学マネジメントの実現はそのために必要な環境を創出する。私が国際基督教大学のマネジメント層に加わったのは、学務副学長に任命された2008年4月である。その4年後の学長就任式では、「一人ひとりの可能性を最大限に引き出す大学」を目指すことをビジョンの筆頭に掲げた。今月末に任期を終えるが、「個々人の可能性を最大限に伸長する教育」への転換を求める「グランドデザイン答申」を策定した大学分科会将来構想部会副部会長、そして特別委座長として、所属機関だけでなく中央教育審議会においても、次世代のための大学を構想する営みに参画できたことは、誠に幸いであった。※1文部科学省 大学分科会 教学マネジメント特別委員会https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/047/index.htm※2文部科学省 第152回大学分科会 資料3-2・3-3・3-4https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/siryo/1422495_00001.html特集 教学マネジメントDPの定める目標を達成できたのか自己評価を*3大学等において、学生に短期大学士・学士・修士・博士・専門職学位といった学位を取得させるに当たり、当該学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力を明示し、それを修得させるように体系的に設計した教育プログラムのこと。出典:「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(平成30年11月中央教育審議会)用語解説。なお、大学の学部等で実施される教育課程も上記の要件を満たすものは、学位プログラムといえる。2.本特別委員会における議論の範囲について本特別委員会は、「グランドデザイン答申」中「Ⅶ.今後の検討課題」として掲げられた事項のうち、「教学マネジメントに係る指針の策定、学修成果の可視化と情報公表の在り方に関する検討を行うこと」を任務とする。「Ⅶ.今後の検討課題」として掲げられたもう一つの事項、すなわち、設置認可や認証評価など国が行う4444「質保証システム」の改善、現在の設置基準の見直しなど「設置基準等の質保証システムについて見直しを行うこと」は、来期の大学分科会において新規の部会を設ける方向が既に示されている。また、「グランドデザイン答申」の他の項目、「多様で柔軟な教育プログラム」「多様性を受け止める柔軟なガバナンス」など「Ⅱ.教育研究体制」、「Ⅳ.18歳人口の減少を踏まえた高等教育機関の規模や地域配置」、「Ⅴ.各高等教育機関の役割等」、「Ⅵ.高等教育を支える投資」などについては、既にこれまで多くの議論が行われており、一定の結論が盛り込まれているところである。これらの議論は分かちがたく連動する部分もあり、本特別委員会での議論の成果を適切に共有していく必要があるが、本特別委員会においては、現行の制度を踏まえ、各大学が取組を進める上での留意点等となる「教学マネジメントに係る指針」の作成と、これを念頭に置いた学修成果の可視化と情報公表の在り方を集中的に議論していく必要がある。本特別委員会が、そのミッションを最大限果たせるように、委員各位のご協力をお願いしたい。3.その他•審議時間が限られている中で、本指針は、まずは大学の学士課程及びこれと共通性が高い短期大学の課程を念頭に作成することとしたい。なお、議論に当たっては、大学院の課程、高等専門学校についても、その独自性を踏まえつつ一定の適用が可能となるように意識したい。•教学マネジメントにおけるサイクルは、各委員からご提案のとおり、様々なレベルのものが重層的に積み重なっているものであるが、「グランドデザイン答申」において「PDCAサイクルは、大学全体、学位プログラム、個々の授業科目それぞれの単位で有効に機能している必要がある」とされていることから、本特別委員会においては、「大学全体」、「学位プログラム」 、「個々の授業科目」という3つのレベルを意識しつつ、議論を進めていくこととしたい。ただし、特に「大学全体」というレベルについては、大学の規模や学部構成、経営資源等において大学ごとに多様性があることには十分留意する必要があると考える。*3

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