カレッジマネジメント222号
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13がえる。また、取組内容は、施設の現状、財政状況、取組体制等の違いにより、大学によって大きな開きがあり、上記アンケート調査結果からは、「全学的視点からの施設マネジメントの実施が十分でない」、「現状把握による課題の分析・評価、解決方策の策定が実施されていない」、「長期的な維持管理費を推計していない」等、施設マネジメントの取組が十分でない大学も見られ、これらが施設面の課題が解決できていない一因であるとも考えられる。(2)経営者層自らによる施設マネジメントの必要性施設マネジメントの実施に当たっては、既存施設の安全性や機能性、利用方法等の現状を把握し、教育研究等にもたらす効果や必要な財源確保の方策を十分に検討したうえで、保有施設の総量の最適化を図りながら、施設の効率的な活用や計画的な新増改築・改修事業を進めていくことが重要である。これにより、現状における施設面の課題の解決につながるとともに、将来生じうる課題を未然に防ぐことが可能となる。そのためには、経営者層自らが、施設の現状と課題を把握し、何を優先すべきかを総合的に判断して、全学的な取組として施設マネジメントを率先して進めることにより、質の高い教育研究環境の維持に努めることが必要である。1.大学経営の一環としての施設マネジメント施設は、人材・資金・情報等と同様に、経営資源の一つである。昨今の厳しい財政状況のなかで大学の理念やアカデミックプランを実現するためには、この施設についても、最小限の投資により最大の効果をあげることができるよう、戦略的な運営が必要である。この「施設の戦略的な運営」こそが施設マネジメントであり、キャンパス全体について総合的かつ長期的視点から教育研究活動に対応した適切な施設を確保・活用することを目的として実施する。具体的には、施設の改修、新増改築等の工事を伴う事業のみならず、定期的な修繕・更新や点検保守等の維持管理、既存施設の学内での再配分や利用効率の向上、光熱水費の削減等の省エネルギー対策、さらにはこれらに必要な財源確保など、施設全般に係る様々な取組である。施設の戦略的な運営は、施設に係る取組を大学経営の一環として捉え、教育研究や財務の戦略との整合性を図りながら実施するべきものである。2.トップマネジメントによる全学的体制の構築施設マネジメントは、大学経営の一環であり、経営者層のリーダーシップによる全学的体制で実施するべきものである。経営者層は、大学の理念やアカデミックプランを実現するために、事務部局による情報の収集・分析や実施方策の提案を踏まえ、部局の枠を超えて学内の資源配分を戦略的に見直す等、大学経営の観点から意思決定を行うことが求められる。経営者層が、強いリーダーシップにより施設マネジメントを機動的に決定・実行していくためには、施設マネジメントをトップマネジメントとして制度的組織的に明確に位置づける必要がある。例えば、学内における規則等の見直し・制定を行うことも有効である。実効性のある施設マネジメントを実施していくためには、施設担当部課と財務部局をはじめとする本部事務局との連携を図る横断的な実務体制を構築するとともに、学内会議等における各部局等との協議により、学内の合意形成を図る必要がある。また、取組の具体的な検討に当たっては、施設経営について高度な専門性を有する人材を活用することが重要であり、必要に応じて民間のノウハウ等を活用することも有効である。また、教職員・学生等の施設利用者へ施設マネジメントについて普及啓発し、施設利用当事者としての参画意識を醸成することも不可欠である。共有財産である施設を大切に使用すること、特に教員に対しては、教育研究スペースを必要以上に専有しないこと等、利用者倫理の啓発を図るとともに、説明会の開催やウェブサイトでの取組紹介等を積極的に行い、施設マネジメントの取組への理解を深めることが必要である。3.PDCAサイクルにおける経営者層の役割施設マネジメントの実施に当たっては、PDCAサイクルを確立し、取組を継続的に改善していくことにより、教育研究環境の持続的向上を図る仕組みを構築することが必要である。具体的には、中期的な行動計画を策定するPDCAサイクル(図1)をリクルート カレッジマネジメント222 / May - Jun. 2020第2章 基本的な考え方特集 教育改革を実現するキャンパス戦略

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