カレッジマネジメント222号
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技術革新により、産業構造や働き方が劇的に変化することが予想されます。本連載では、領域×Technology=「X Tech(クロス・テック)」に着目し、産業の大きな変化の兆しを捉えていきます。取材協力森田 光一氏 野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 上級コンサルタント土橋 和成氏 野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 主任コンサルタント#07 RetailTech(小売とテクノロジー)IT化で業務効率化と新たな購買体験・価値の提供が進む小売業界で変わる産業セルフレジ、無人店舗、カメラやセンサーを活用した在庫管理、AIによる購買予測、キャッシュレス決済…。小売り事業にテクノロジーを活用して業務効率化を図るRetailTech(リテールテック)の進化が止まらない。省力化・少人化、利便性の向上だけではない。新たな購買体験を生み出し、その価値も多様化させているのだ。「タブレット決済機能が付いたレジカートに表示されるレコメンドや、店舗のサイネージなど、コミュニケーションツールやメディアとしての活用も進んでいます」野村総合研究所の調査研究によると、インターネット上の情報を通じてECサイトやリアル店舗で商品購入やサービス利用するオムニチャネル市場は、B2CのEC市場を含め成長を続けており、2024年には76兆円を超える。これからリテールテックが本格導入されれば、さらに加速するだろう。小売業においても、IT人材の確保が必要となってくるという。どのようなスキルが求められるのだろうか。「特に不足している人材は、データアナリティクスに精通したエンジニアやデータサイエンティスト。そして、分析したいデータを考え、どうデータを集めて分析し、経営に活かしていくかを考えるディレクターやプロジェクトマネジャー、コンサルタントです」さらに、サービスや現場が使いやすいインターフェースの改善に、データをどう活かせるかを考える思考力や探求心も求められる。そのためには、好きなジャンルを追求することも重要だという。「ファッションが好きな人はファッション、スマホゲームが好きな人はスマホゲーム、バイクが好きな人はバイク。なぜそれらが存在しているのか。それがなぜ生まれてきて、受け入れられた背景や、それに対して自分はどうしていきたいのか。歴史的なことを含めて深く考えて追求していくことが大切です」生産性、効率性だけではなく、好きなモノやジャンルを追求し、体験の引き出しを創ることが、また新たな顧客体験の向上に繋がっていく。未来の買い物体験がどう進化していくのか、期待したい。(文・馬場美由紀)80706050403020100201620172018201920202022202120232024B2CのEC市場オムニチャネルコマース市場16.649.417.619.320.521.723.024.325.727.252.756.659.662.665.869.172.576.1(年度)(兆円)日本におけるオムニチャネルコマース市場とB2C EC市場予測出典:野村総合研究所 ITナビゲーター2019年版 P216オムニチャネルコマース市場:インターネット経由かリアル店舗かを問わず、一般消費者向け商品・サービスをインターネット上の情報に接触したうえで購入・利用する市場B2C EC市場:インターネット経由で一般消費者向け商品・サービスを販売する市場

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