カレッジマネジメント222号
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4480年代は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われたように日本が大きな経済成長を遂げた時期でした。しかしそれは、日本がどうあるべきかを国内だけの視点で考えている時代でもあり、国際社会に開かれた日本とは言えない状況だったと思います。90年代以降はグローバル化に対する認識が少しずつ変わり、日本企業においてはグローバル人材へのニーズも生まれました。とはいえ経営層レベルの視点と採用の現場でその乖離があり未だに埋まっていません。残念ながら日本の社会のシステム全体が本当の意味で国際化したという状態には至っていないと思います。日本の高等教育に関しても、課題解決への大きなインパクトになるような具体策は打ち出されていないといえるでしょう。入試制度の改革についても同様。時間をかけすぎていると思います。日本は、常に同じ日本人同士の間で相手の行動が予測でき、不安がない。つまり、予測のつかないこと、新しいことへの挑戦や変革に対しては、その課題を認識していて解決へのオプションが分かっていても、実際の行動に対しては後ろ向きです。また、何事にも失敗しないように、最初からパーフェクトを求めようと考えすぎる傾向がある。そういったことが背景にあると思います。しかし、「少しずつ」や「いつかやる」という姿勢では、今後の教育改革は間に合わないでしょう。人口減少のなかで、本当に800もの大学が日本に必要なのか。今は文部科学省の助成金によってそれらの大学の運営が成り立っていますが、助成金がいつか途絶え、国として難しい結論を出さなければならないかもしれません。アメリカでは大学の予算状況が厳しいと判断したら、認証評価を通りません。そもそも学生を第一に考えた良い大学教育を実現しようとすると、人件費も設備費もかかります。アメリカでは日本の大学よりもかなり多くの職員が学生支援のために働いています。テンプル大学ジャパンキャンパスでも、学部生1320人に対して、アカデミック・アドバイジングのプロの専門職員が6人。スチューデント・サービスのスタッフも8人。この小さな大学でもそれだけいます。一部の大きな大学や国公立大学を除き、あらゆる大学に対して、良い教育をするために、国が助成金を出して頑張る方向なのか、それとも打ち切るのか。現在、助成金は定員との関係で決められていますが、その考えは単純すぎるのではないのかと思います。助成金の適正な配分は、各大学がどんな改革をするのかという計画リクルート カレッジマネジメント222 / May - Jun. 2020時間をかけすぎている日本の大学の国際化への改革良い教育を実現するために助成金にどこまで依存するかテンプル大学ジャパンキャンパス 学長ブルース・ストロナク氏クライシスに突入する前に、早く行動を始めるべき1950年アメリカ・メーン州出身。ベッカーカレッジ(米国マサチューセッツ州)学長代行・副学長、2005年〜2008年公立大学法人横浜市立大学学長を経て、2008年4月〜ペンシルベニア州立テンプル大学ジャパンキャンパス学長。山形大学、筑波大学経営協議会委員唯一の4年制米国大学日本校の学長が見た日本の高等教育改革

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