カレッジマネジメント222号
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47リクルート カレッジマネジメント222 / May - Jun. 2020クな分野でも、この3年間でフルブライト奨学生(Ph.D.プログラム)が3人出ているといえば、驚かれるかもしれません。3人ともアメリカで業績を積んで、将来は本学の研究を支えたいというのです。この3人の思いは、正に本学の創立者3人の思いに通じるものがあります。国際化とは、英語ができることでも留学することでもなく、ある種の“触媒”だというのが持論です。海外に出ることで学生の意識に化学反応が起き、一皮剥けた人間になる。これが重要なのです。サマーセッションに行った学生のGPAデータを見ると、面白いことに気づきます。英語とGPAとの間には全くといってよいほど相関はなく、本学でのGPAが良ければ、サマーセッションでの成績もいい。しっかり考えている学生はどこでも通用する。もちろん英語ができれば、彼らの学びはさらに豊かになります。日本は近代化の過程で、当時の先端知識や技術を全てローカライズ(日本語化)できた世界でも稀な国です。この結果、優れたモノや技術で勝てれば外国語は必要ないという意識も生まれました。これが、英語コンプレックスが生まれた一因ですが、今はそういうわけにもいきません。グローバル化した世界では、多様な文化・価値観・歴史的背景を持つ人々とコミュニケーションを図り信頼を勝ち取ることが欠かせません。2008年に国際日本学部を創設した理由はここにありました。2013年には、社会(世界)の様々な現象をデータサイエンスの観点から解析する総合数理学部を作り、ビッグデータの処理やAIの技術を駆使して現代の問題解決を図る人材の育成を始めています。グランドデザイン2030明治大学は2031年に創立150周年という大きな節目を迎えます。その時、本学はどのような大学になっているのでしょうか。周知のように、経済活動のグローバル化は歴史上まれに見る豊かさをもたらす一方で、エネルギー問題、地球温暖化、富の不平等、グローバルな感染症拡大等、国や地域を超えた深刻な問題を生み出しています。富の不平等は「異論の存在を許さない」権威主義の台頭につながり、感染症は人類の生存そのものに対する深刻な脅威になりつつあります。いま、大学はこうした人間の生存と尊厳を脅かす問題に向き合い、これを解決する技術・システム・思想・知恵を生み出すという重大な役割を担っています。「権利自由」「独立自治」を建学の精神とする本学は「人間が人間として生きるに値する平和で持続可能な社会(世界)」の創出を目指す研究・教育拠点でなければならないと、私は思います。こうした認識から、昨年12月に教学長期ビジョン「グランドデザイン2030」を発表しました。基本コンセプトは、「前へ-『個』を磨き、ともに持続可能な社会を創る-」で、これは本学の建学の精神である「権利自由」「独立自治」の現代的表現に他なりません。これまでの長期ビジョンと異なるのは、数値目標を明らかにしたことです。まず、1都3県以外からの出身者を、現在の29%から40%に。国際化では、留学生比率を13%(4000名)に、留学経験者比率を50%に。現在、8つのダブルディグリー・プログラムがありますが、今年度には政治経済学部とタマサート大学との間で「双方向型ダブルディグリー」も始まります。研究では、受入研究費を15.8億円から50億円に。論文の国際共著率を30%にまでに引き上げます。現在、本学には13の研究所がありますが、その一つである「バイオリソース研究国際インスティテュート」は、国内外の大学、研究機関、企業を取り込んだ国際的研究組織となっています。ここでは、生理学・解剖学的にヒトに近いブタを利用し、ヒトの臓器再生を行う最先端の研究が行われています。教育では、対面型授業とオンライン型授業のベストミックスを考えながら、「eラーニング科目」数を500科目まで引き上げます。私が学長として目指しているのは、世界の大学と本学との融合です。世界中の大学から、講義や教員をクロス・アポイントメント制度を通じて明治大学に取り込み、世界標準の教育を実現したいと考えています。創立者の理念や創立時の歴史背景が、その大学の背骨を形成することは間違いありません。「明治大学の学生はオープンで気取らず、しかし仕事をやらせればすごいことを成し遂げる」といわれる学生を育てたい。明治大学はこれからも、時代に挑戦し果敢に「前へ!」進みます。(撮影 平山 諭)

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