カレッジマネジメント222号
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48大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあると言えるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索する中、さまざまな取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、崇そう城じょう大学の「何ができるようになったか」を問う実学主義教育と、「意欲を引き出す教育」について、中山峰男学長にお話をうかがった。崇城大学は、1991年の大学設置基準改正(大綱化)以降、「デザイン」「生命」「情報」の3つのキーワードを軸に数回の改組を行い、現在は工学部、生物生命学部、情報学部、薬学部、芸術学部の5学部体制をとる。熊本工業大学からの校名変更は芸術学部を開設例えば、明治時代を作ったのは、江戸時代の価値観に慣らされてない若い人達でした。その一人である渋沢栄一が、1867年のパリ万博にお付きで行き、ヨーロッパの近代国家を見て日本との違いに愕然としたのは20代後半でした。帰国して、『銀行』をはじめ江戸時代にはなかった数々の制度や会社を作っていきますが、それは若いからできたのだろうと思います。同じように今の若者が新しい時代を作っていくには、受け身の学生を、自分から求めていく、アグレッシブな学生へと変えていかないといけないと思っています」。2011年にスタートした教育改革SEIP-I(SOJO Educational Innovation Project: シープワン)でもまず、学生の夢や志を育む狙いで「チューター制」を入れた。教員1人が5人の学生を、入学から卒業まで4年間、一貫して受け持つ。「1人ずつと対話を重ね、『君は何がしたいの、夢は何』といったことを問いかけながら、学生の自立を促し主体性を引き出していきます」。さらに中山学長は、SEIP-Iの主な取り組みとして情報・英語・起業の3分野をあげる。した2000年だ。中山学長は沿革に由来する教育理念についてこう語る。「創立は戦後間もない1949年、電気技術者の育成が目的でした。従ってその当時から、『何を学んだか』ではなく、『何ができるようになったか』を問う『実学主義』を基本的な教育理念としています」。象徴的なのが、工学部宇宙航空システム工学科だ。パイロット養成コースは、国内の大学で唯一、飛行機も人材も自前で揃えて、パイロットを育成している。「1987年に熊本空港に直結する空港キャンパスを設けましたが、パイロット育成が目的ではありませんでした。空力や流体力学は、黒板に数式を書いて抽象的に教えるより、学生を飛行機に乗せて体感させると非常に理解が早かった。それで、実学教育に飛行機が必要だと考えたのです」。中山学長の課題意識は、学生の受け身の姿勢・考え方だ。「第4次産業革命と言われるように、今とは価値観の全く違う世の中がくるでしょう。その時求められるのは若者の活躍です。リクルート カレッジマネジメント222 / May - Jun. 202025崇そう城じょう大学「意欲を引き出す教育」をモットーに体験型教育を徹底中山峰男 学長デザイン、生命、情報で貫く実学主義主体性を引き出すための教育改革SEIP-Iによる情報教育、英語教育強化
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