カレッジマネジメント222号
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50リクルート カレッジマネジメント222 / May - Jun. 2020く、本人がやる気を出すか出さないかの問題」と言う。「起業には発想法が大切ですが、考えようという意欲が生まれないと、発想そのものが生まれない。意欲を引き出すのがアントレプレナーシップ教育ではないかと思います」。SOJOスタートアップラボは現在、学生ベンチャー2社に出資している。そのうちの1社が、起業部出身の古賀碧さんらが2018年4月に創業した(株)Cシアモiamoだ。古賀さんのチームは在学中に「焼酎粕を利用した光合成細菌の培養キットの開発・販売」を2016年度「キャンパスベンチャーグランプリ」に応募し、全国大会でテクノロジー部門大賞・文部科学大臣賞を受賞した。これをもとに、古賀さんが代表取締役社長となって起業、役員・社員はSOJO Venturesの仲間達だ。このほかにも、各種のビジネスプランコンテストに応募する学生は多く、入賞の成果も次々と上がっている。SEIP-Iの取り組みを継続しながら、2019年度からは、2017年度策定のSEIP-IIも実施されている。その一環である1年次前期必修の「SOJO基礎I」は、受け身の学生を主体的に変えることが目的の一つだ。学生は、朝食はとったか、睡眠時間は何時間かといった自分の生活状況と、新聞から自分で選んだニュースについての感想を、eポートフォリオ「今週の活動とトップニュース」のシートに記入、毎週提出する。もう一つの目的が、課題に取り組む基本的な方法を学ぶことで、「各学科ホームページの改善案作成」といったテーマにチームで取り組む。「1年次後期の『SOJO基礎II』や2年次の『キャリアプレコーオプ』では、企業からもらう課題に学生が小グループで取り組みます。3年生は2020年度からですが、学科の研究も含んだ形で課題解決に取り組ませる予定です。これらが、自分が将来何をしたいか考える一つの方法につながっていけばと考えています」。崇城大学では、SEIP-I・SEIP-IIの取り組み全体を「学生の心に火をつける教育」としている。中山学長は「学生はみんな、基本的には意欲を持っていると思います。ただ、今までは意欲を出したくなるような場もなければ、教育の中で発現させようとする場面もなかった」と言い、2016年の熊本地震の経験を語る。「4月14日、16日に地震があってすぐ閉講になり、授業を再開したのは連休後でした。大半の学生が震災にあっているので、みんな落ち込んでいるだろうと思っていたら、あにはからんや、みんな笑顔で現れたのです。実は、震災を通じて地域の人達との助け合いを経験していたのです。避難所等で高齢者がなかなか活動できない中、若い人が活躍し、ありがとうと言われる。それがどんなに価値あることかと体験して、自分の存在感が認識できたのです。こういうことが、若い人の前向きの姿勢を作り出す大きな要因になると思いました」。そこで2016年に始めたのが、「笑顔と感謝の表彰制度」だ。年4回、年間合計で700人強の学生が、他薦または自薦で表彰される。「国際学会で発表、スポーツの大会で上位入賞、ボランティアで活躍等、何らかの経験をして、『一歩前に出た』学生がそれだけいる。学生の意欲を引き出すための一つの仕掛けとして、積み重ねていこうと考えています」。中山学長は「今後の崇城大学が一番するべきこと」を、「学生一人ひとりが持っている才能を大学の中で引き出す、あるいは本人に自覚してもらうこと」と語る。「才能というのは人それぞれ違う。つまり、その人の個性です。今まで日本の大学はジェネラリストを養成することが中心で、個性についてあまり考えてきませんでした。でもこれからの日本には、一人ひとりの個性を認識して導き出し、多様なスペシャリストをたくさん育てていくことが必要ではないかという気がしています。幸いにして本学では、先生方がしっかりと学生に向き合ってくれています。学生達も自分のやりたい仕事を見つけてくれています。そういう教育を教職員が一丸となって続けていきたいと思っています」。教育改革を発展させたSEIP-II学生の心に火をつける教育一人ひとりの個性と才能を引き出す(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

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