カレッジマネジメント222号
52/58

54労働施策総合推進法の改正に伴い、2020年6月1日より、パワーハラスメント(以下「パワハラ」)防止措置が事業主の義務となる。また、既に男女雇用機会均等法と育児・介護休業法で雇用管理上の措置を講じることが義務づけられていた職場におけるセクシャルハラスメント(以下「セクハラ」)と妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについても、法改正により防止対策が強化される。大学は、これまでもセクハラ、アカハラ(アカデミックハラスメント)、パワハラなどの防止に努めるとともに、相談体制の整備、問題が生じた場合の解決、再発防止等に取り組んできた。その目的は、学生が安心して学ぶことのできる環境の確保であり、教職員が快適に働くことのできる職場の実現である。ハラスメント対策を担う部署には多くの相談が持ち込まれ、担当者はその対応に追われ、委員会による調査も遅れがちといった大学も多いのではなかろうか。これらの問題は対応を誤ると解決が長引き、教育研究現場や職場、さらには大学全体に大きなダメージを及ぼす事態に発展しかねない。特に、パワハラ防止措置の義務化が教職員のパワハラへの関心を高め、これまで表に出なかった問題が持ち込まれるなど、より難しい対応を迫られる可能性がある。大学には、大別すると教員と職員という2つの職種があり、それぞれに常勤・非常勤、無期・有期など多様な雇用形態がある(附属の学校や病院を持つ大学はさらに複雑である)。しかも、管理的立場にある者がマネジメントに関する十分な訓練を受けないままその地位に就くケースも多い。パワハラに限っても、企業など一般の組織以上に多様かつ複雑な問題が生じる可能性がある。本稿では、キャンパスハラスメントの中のパワハラに焦点を当て、それを防止することに加えて、さらに進んで健全で活力ある職場をどう実現すれば良いのかについて考えてみたい。個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境等をめぐるトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための「個別労働紛争解決制度」の施行状況が毎年厚生労働省より公表されている。平成30年度の総合労働相談件数は111万7953 件と11年連続で100万件を超え、うち民事上の個別労働紛争相談件数は前年度比5.3%増の26万6535件となっている。その中で最も多いのが「いじめ・嫌がらせ」の8万2797件で、前年度比14.9%増と過去最高の件数に達している(厚生労働省「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」2019年6月26日)。厚生労働省委託事業「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」(2017年3月東京海上日動リスクコンサルティング株式会社)においても、従業員からの相談の最多がパワハラで32.4%、以下メンタルヘルス、賃金・労働時間等の勤務条件、セクハラ、コンプライアンス、人事評価・キャリアの順となっている。また、過去3年間にパワハラを受けた経験があると回答大学を強くする「大学経営改革」ハラスメント防止対策の強化は健全で活力ある職場づくりの好機吉武博通東京都公立大学法人 理事筑波大学名誉教授リクルート カレッジマネジメント222 / May - Jun. 202087パワーハラスメント防止措置が事業主の義務に増加の一途を辿るパワハラに関する相談

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る