カレッジマネジメント222号
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55した比率は34.5%で、心身への影響に関する回答では、「怒りや不満、不安などを感じた」「仕事に対する意欲が減退した」「職場でのコミュニケーションが減った」等が上位に挙がっている。その一方で、パワハラを受けたと感じながら「何もしかなった」との回答は4割以上にのぼっている。パワハラの予防・解決のための取り組みについては、既に実施している企業・団体の比率が半数を超えているものの、従業員規模の大きな企業・団体に比べ、規模の小さな企業・団体の比率が低いとの結果も示されている。また、取り組みを進めた効果として、「管理職の意識の変化によって職場環境が変わる」(43.1%)、「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる」(35.6%)等が上位に挙げられている。厚生労働省に設置された「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」は2018年3月に報告書を公表している。同報告書はその冒頭で次のように述べている。「職場のパワーハラスメントは、相手の尊厳や人格を傷つける許されない行為であるとともに、職場環境を悪化させるものである。こうした問題を放置すれば、人は仕事への意欲や自信を失い、時には心身の健康や命すら危険にさらされる場合があり、職場のパワーハラスメントはなくしていかなければならない。また、企業にとっても、職場のパワーハラスメントは、職場全体の生産性や意欲の低下など周りの人への影響や、企業イメージの悪化などを通じて経営上大きな損失につながるものである。」(「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」2018年3月)。このような経緯の中で法改正が行われ、パワハラ防止が事業主の義務とされた。法改正に基づき厚生労働省が示した指針では、職場におけるパワハラを、「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう」と定義したうえで、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」についてはパワハラに該当しないとしている。対象となる労働者には、正規雇用労働者だけでなく、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者が含まれる。派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける事業主にも同様の義務が課せられている。そして、パワハラに該当する例として、身体的な攻撃(暴行・傷害)、精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)、人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)、過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とリクルート カレッジマネジメント222 / May - Jun. 2020パワハラは尊厳や人格を傷つける許されない行為厚生労働省リーフレット(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000596904.pdf)を基に作成「パワーハラスメント防止措置の義務化」の全体像職場におけるパワハラの3要素①優越的な関係を背景とした言動②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動③労働者の就業環境が害される代表的な言動の類型⑴身体的な攻撃(暴行・傷害)⑵精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)⑶人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)⑷過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制)⑸過少な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること等)⑹個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置◆事業主の方針等の明確化及び その周知・啓発◆相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備◆職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応◆そのほか併せて講ずべき措置

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