カレッジマネジメント222号
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56リクルート カレッジマネジメント222 / May - Jun. 2020かけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)、個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)の6つを挙げている。その上で、事業主が必ず講ずべき措置として、以下の4つを義務づけている。⑴事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発⑵相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備⑶職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応⑷⑴から⑶までの措置と併せて講ずべき措置(プライバシーを保護するための措置、相談等を理由に不利益な取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること)「優越的な関係を背景とした」言動について、指針は、当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指し、・職務上の地位が上位の者による言動・同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの・同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるものが含まれるとしている。大学の場合を考えてみたい。学校法人の理事長、理事、大学の学長、副学長、学部長、事務局の部課長など、経営者又は管理職の地位にある者と下位者との間だけでなく、教授、准教授、助教という職名の異なる教員間、無期雇用の専任教員と任期付教員の間、教員と職員の間、正規雇用職員と非正規雇用職員の間などでもパワハラは起こり得る。なかでも大学固有の問題として留意すべきは、教員と准教授・助教の間、あるいは教授・准教授と任期付教員・研究員の間で生じるトラブルである。特に近年、外部資金によって雇用される特任助教など任期付教員が増加している。資金を獲得して研究を主導する教授とこれらの任期付教員とのパワーの差は歴然である。しかも、閉じられた研究室の中で何が起きているかは見えにくい。アカハラと重なり合う部分もあるが、彼ら彼女らがわが国の研究力を支え、大学教育の将来の担い手でもあることを常に意識し、健全な研究室運営に努めなければならない。教員と職員の間の問題も大学に特有である。教職協働が謳われ、状況は変わりつつあるが、学部・研究科等の現場では、法人や大学の方針と教員の抵抗の板挟みに遭い、教員の侮辱的な言葉や暴言に苦しんでいる職員もいると思われる。職員組織内で生じる問題は、上司・部下の間や正規・非正規の間など、その性質は企業などと大きく違わないが、大学は職員数だけでみると規模の小さい組織が多く、学内での相談を躊躇する傾向も強いと推測される。表に出ない不信や不満は職場活力の低下をもたらす。パワハラ防止措置の義務化を、これらの構造的問題を浮き上がらせ、大学の組織特性にふさわしいマネジメントのあり方を考える好機と捉える必要がある。「パワーハラスメント」はメンタルヘルスの研修と相談を行う会社の設立者が2001年に生み出した用語である。このような概念が登場し、普及するに従って、それまで水面下にあった問題が次々表面化し、相談や紛争の件数が増加する面もある。特に、パワハラについては、上司の指示や指導に不満を感じた者が一方的な被害を主張することも多く、それを恐れるあまり、業務指示や指導が及び腰になるということも起こり得る。言うまでもないが、上位者が仕事を指示し、成果を評価し、不十分ならば指導するという本来の役割を果たすことを躊躇するならば組織は成り立たない。仕事に取り組む姿勢、態度、能力に課題があれば、厳しい指導と適切な支援を通して成長を促すのは当然である。大学の構造的問題を浮かび上がらせる発生要因に個人の問題と職場環境の問題

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