カレッジマネジメント222号
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7に当たっての組織・システムの構築の、大きく2つの改善を提案しています。以下、重要な点を挙げていきます。無秩序でまとまりのないキャンパスを生んだ原因は、キャンパスの将来像を計画的に考えていくための、キャンパスマスタープラン(以下、CMP)がなかったためです。CMPは、長期的なキャンパスの骨格を定めるフレームワークであり、アカデミックプランと経営戦略の融合を図るための施設計画の羅針盤です。今後は学生数が減少していく中で、増設してきた施設の減築・再利用も、維持管理のうえで大きな課題となっています。さらに、グローバル化への対応、イノベーション創出、学際型研究等、大学改革の成果を出すためには、人的交流によるコミュニケーションが不可欠です。しかし、研究室や実験室といった研究空間に重きが置かれ、パブリック・共用スペースの充実は後回しにされてきたため、魅力ある交流空間に乏しいキャンパスが多くなっています。こうした課題を解決するためには、既存キャンパスの再評価を行い、維持管理も含めた長期的なCMPに基づき、キャンパス整備を計画的に進めていく必要があります。この時、CMPは固定的である必要はなく、キャンパスの骨格や歴史性など大学が将来にわたって継承すべき「変わらない部分」と、大学組織や戦略の変更に対応可能な「変えられる部分」を明確にし、概ね5〜10年スパンで、社会の変化に合わせて柔軟に対応していくのがよいでしょう。グローバル人材育成を目的に、教育の場としての国際寮を導入する大学も増えてきました。共同体験という教育寮としての側面や、日常的に留学生等と共同生活することによる異文化理解やコミュニケーション能力の向上といった、人材育成の機能を担っています。学生の共同体験を実現するためには、コモンスペースと4〜8人程度の個室が備わった、いわゆるシェア形式、ユニット形式と呼ばれる寮形式が望ましいと言われています。ぜひ積極的な検討を望みます。大学のキャンパスにおける「交流活動」を喚起する環境とはどのような空間でしょうか。教職員や学生の異分野交流として重要な空間は、教室や研究室といった勉強以外の場です。提言ではコモンスペースと呼んでいます。具体的には、大小の広場、庭園、並木道のベンチ等の外部空間や、建物内ではエントランスホールや廊下、ラウンジ、食堂等の共用施設です。最近ではラーニングコモンズを備えた図書館もそれに当たるでしょう。これまで大学のファシリティは教室や研究室に偏り、教員はとかく自分の研究室に拘りがちでした。しかし最近では学生の立場に立って、学生の居場所と称する共用スペースをキャンパスの随所に配置する大学も増えてきました。文理融合が求められる今、工学部の学生が人文系の学生と議論する機会として有効なのは、ラウンジやカフェだったり、芝生やテラスの木陰のテーブルだったりするのです。欧米の大学には、強いコンセプトを持つキャンパスデザインを継承するため、キャンパスディレクターが存在します。対して日本は、長期的視点に立ち、キャンパスデザインを創造、継承、整備する専門のポストや組織が少ないと言えます。施設整備は、多額の費用を投じる大学の戦略的なツールです。このためキャンパスディレクターには、経営上の様々な判断ができ、実行力を持ってキャンパス整備を可能とするようなポスト、つまり副学長に相当するポストが必要だと考えています。決して建築の専門家である必要はありませんが、大学の理念やアカデミックプランを実現するためのプログラム作りと空間作りを統合的に考え、ファシリティに何が必要かを理解・判断できる人。そして、それを支え、長期的視野に立って戦略を検討する専門の組織やシステム構築が必要です。例えば東京大学にはキャンパス整備、施設整備担当の副学長が配置されています。リクルート カレッジマネジメント222 / May - Jun. 2020キャンパスデザインの改善1キャンパス整備に当たっての組織・システムの構築2長期的なキャンパスマスタープランの整備副学長に相当するキャンパスディレクターと長期的視野に立つ検討組織共同体験の教育の場としての学生寮の整備異分野交流を促すためのコモンスペースの充実特集 教育改革を実現するキャンパス戦略
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