カレッジマネジメント223号
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11リクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 2020生(約50万人卒/年)が修得すべき数理・データサイエンス・AIのリテラシーとは何か、を検討する必要があった。モデルカリキュラムでは、『それは「データ」をもとに事象を適切に捉え、分析・説明できる力を修得すること、すなわち「データ思考を涵養すること」である』と言っており、これは数理・データサイエンス・AI教育の全てに共通する重要な考え方となろう。また、各大学・高専がカリキュラムを実施するにあたり、『数理・データサイエンス・AIを活用することの「楽しさ」や「学ぶことの意義」を重点的に教え、学生に好奇心や関心を高く持ってもらう魅力的かつ特色ある教育を行う。数理・データサイエンス・AIを活用することが「好き」な人材を育成し、それが自分・他人を含めて、次の学修への意欲、動機付けになるような「学びの相乗効果」を生み出すことを狙う』としていることも重要なポイントである。ここまで、数理・データサイエンス・AI教育に関する国の政策及びその考え方、進展を中心に述べてきたが、これらの取組みは、現場の大学教員の皆さまの理解、協力無くして実現できないことは言うまでもない。このため、少し僭越ではあるが、最後に、大学教員の皆さまへの期待をいくつか述べておきたい。冒頭述べたとおり、いま、期せずして、大学教育、とりわけ授業そのものを見直す、変革する機運が高まっている。数理・データサイエンス・AIという令和時代のリベラルアーツを、どのようなカリキュラム、教育方法で行えば、学生に深い気づきを与えられるか、授業の価値の最大化を図るべく模索する機会になり得るだろう。フィジカルの良さ、デジタルの良さ、これらを上手に組み合わせた教育手法の再設計に取り組んでほしいと願っている。文部科学省としても、大学教育、授業のデジタライゼーションを進める施策を準備したい。そのためには、数理・データサイエンス・AI教育に携わる各教員の共創・協調が何より必要であろう。この領域には、例えば、数理統計、データサイエンス、AI(深層学習など)、コンピュータサイエンスなど複数の専門分野が存在する。実は、霞が関以上に、学問の専門分野は壁が高いというのが筆者個人の印象である。これからの時代を生きる学生・社会人にとって必要な、令和時代のリベラルアーツとは何か。自らの専門分野を越えて、協力して具体化してもらいたい。そして、数理・データサイエンス・AIのリテラシーレベルの教育カリキュラムの実施にあたっては、オンライン教材や民間企業等(スタートアップを含む。)が開発・提供する教材の活用を含め、他大学、民間企業等の優れた取り組みを大いに参考とし、活用してもらいたい。学生は“Z世代”と呼ばれるデジタル・ネイティブであり、スマホひとつで、学びたいときに学びたい情報(知識等)が手に入れられる。従って、教育カリキュラムは教員が全て自前で用意する、という前提ではなく、優れた取り組みは大いに活用して、その上で自らの授業でしかできないことは何か、を探求していただき、授業の価値、効果の最大化に取り組んでもらいたい。数理・データサイエンス・AI教育の全国展開は、日本の将来に極めて大きな影響を与えるチャレンジングな取組みである。自らの専門分野やこれまでの取り組みの延長線上にその解を求めるのではなく、私達はどのような未来社会を創るのか、その想像力を最大限に働かせながら、創造すべき未来社会からのバックキャストで教育改革に共に挑んでいければ幸いである。(※1)遠隔授業テレビ会議システム等を利用した同時双方向型の授業や、オンライン教材を用いたオンデマンド型の授業を、自宅等にいる学生に対して行うこと。(※2)デジタライゼーション(digitalization)デジタル技術を活用して、あるモデルを変革し、新たな利益や価値を生みだす機会を創出すること。なお、デジタイゼーション(digitization)は、デジタル技術を活用しプロセスを変換、効率化やコストの削減をすることであり、意味が異なる。●大学教育、授業のデジタライゼーション(※2)を。●専門分野の共創・協調を。●社会の熱量を上げ、民間の取り組みの最大限活用を。今こそ、大学教育のデジタライゼーションを特集 AI・データサイエンス教育と大学

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