カレッジマネジメント223号
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12人間社会の発展の歩みは一律ではない。P. F. ドラッカーが指摘したように、人間社会では数百年に一度、あるとき急激な変化が始まり、世界観も価値観も社会構造も政治構造も技術や芸術も変えて、やがてそれまでは想像できなかったような新しい世界が拓ける[1]。われわれは今まさにそのような歴史の転換期のまっただなかにいる。言うまでもなく、この転換の原動力は情報通信及びセンサー技術の飛躍的発展によって出現したビッグデータである。社会の隅々に配置されたセンサーからは日々大量のデータが生み出され、ネット社会には人間社会のデジタルデータが大量に蓄積している。その結果、自動運転、画像認識、医療診断等の先端技術が急速に発展するだけでなく、通信・情報発信、情報検索、販売・流通、コンピュータゲーム等個人の生活に密着した社会の隅々に至るまで、これまでの社会常識は一変している。かつて蒸気機関が産業革命を引き起こし工業化社会と資本主義社会を生み出したように、ビッグデータの出現とその利用技術の飛躍的発展が新しいデータ駆動型社会への転換をもたらそうとしている。 データから知識を獲得する方法としての統計学とデータサイエンスは、生命が長い進化の過程で獲得した知的情報処理の能力をサイバー世界において模倣したものに過ぎないともいえる。しかし、近年の情報機器とAI等の情報処理方式の飛躍的発展は人類を知的情報処理のスケールの限界から解き放ち、あたかも量が質に転化したような様相を呈している。また、これまで個人が習得した知識や経験を他者に移転する方法が極めて限定されてきたのに対して、サイバー世界に構築された知識や情報処理方式はほとんど一瞬のうちに大きなコストなしに移転し、共有できることも発展の速度を上げている要因である。このようなデータ駆動型社会への転換にあたっては、データに基づく知識獲得や価値創出が実現の鍵となる。これまでの経済発展を支えてきたのは、土地、資本、労働であったとすれば、今後のデータ駆動型社会の発展の原動力は、データそのものとデータからの知識創出の方法である。そのため、理論科学、実験科学、計算科学に加えデータサイエンスが第4の科学的方法論として重要になっている。今後は文系の社会人にとっても科学・技術研究に携わる理系の研究者にとってもデータサイエンスは不可欠な素養となる。 このような歴史的変化をいち早く認識した欧米では21世紀初頭から統計教育の強化が始まり、さらに2010年代に入るとデータサイエンスの教育プログラムが急速に立ち上がってきた。こうした世界的潮流の中で、遅ればせながらわが国においても、データ駆動型の社会実現の鍵として数理・データサリクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 2020コンソーシアムの設立とその背景標準カリキュラム・教材を協働して作成他大学への普及方策を検討実施数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムが目指すもの数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム議長北川 源四郎(東京大学数理・情報教育研究センター 特任教授)寄稿

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