カレッジマネジメント223号
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16──最先端技術を実装した社会「スーパーシティ構想」が打ち出され、実現に向けて大きく舵を切ろうとしていますが、産業界におけるビッグデータ・AI活用の現状についてお聞かせください。大学でのAIの体系的な理論に関する教育や研究は1980年から盛んに行われていました。一方で、ビジネスの現場で活用が進んだのは、いわゆる第3次AIブームが始まった2010年あたりから。先行したのはインターネット企業で、その後少しタイムラグを置き、製造業や電気、ガス等のユーティリティ企業、小売・流通等、様々な業界で活用が進んでいます。製造業のAI活用で最も早く進んだのが需要予測の領域。従来は経験と勘で行っていた材料調達や生産計画を、現在はAIが代替しています。製造現場で導入されているロボットのAI化は、今まさに進行しつつある分野。小売・流通業では特にマーケティング領域において、SaaS(Software as a Service)やオートメーションツールの活用によるAI化が進んでいます。──そうしたビジネスの現場では、AI人材育成が課題になっていますね。あらゆる業界でAIやビッグデータが活用され、競争力の源泉になりつつあります。統計学やマシンラーニングの基本スキルや応用知識を得るには、体系的な理論に関する教育が必要であり、その習得には長い時間を要します。従来、それらの教育は企業側が行ってきましたが、自社でのデータサイエンスやデータアナリティクス、AIに関する高度なスキルを持つ人材不足を懸念するようになりました。そこで、自社で育成するのではなく、高等教育機関に求め始めています。もちろんデータ活用分野における人材不足は、日本に限った話ではありません。2017年にAPECがデータサイエンスとデータアナリティクス人材の雇用を推進するAPECプロジェクトDARE(Data Analytics Raising Employment)を立ち上げたことからも明らかです。──大学教育に求められているAI人材育成とは、具体的にどのようなものでしょうか。例えばDAREでは、10のコンピテンシーやスキルを定義しています(図参照)。これはいわゆるDSA(Data Science and Analytics)人材として活躍するための「読み書きそろばん」的な基本スキルと言えるでしょう。DAREは大学間国際ネットワークであるAPRU(環太平洋大学協会)とも連携。毎年各国から2名の代表者が参加し、DSA人材に求められるコンピテンシーについて議論を交わします。私も日本の代表者として毎年参加しています。これら基本的スキルを身につけた上で、さらに求められるのがデータリテラシーとモデルリテラシーです。データリテラシーとは、データはAIで分析された結果を基にどんな洞察が得られるかを見る力。モデルリテラシーはモデルの精度を高めるデータを作る力とも言えます。これまで人が分析ツールで行っていたプロセスをAI化する場合、生データをそのまま使うことはしません。数値・画像・テキストでも欠損部分があるため、そリクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 2020需要予測・オンライン化・自動化等、ビッグデータ・AI活用が進むビジネス現場AI人材育成に必要なデータリテラシーとモデルリテラシーとは産学協働でAIリテラシーを高めるグローバルなAI人材教育に期待森 正弥INTERVIEWデロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員。株式会社メルカリの研究開発組織「mercari R4D」顧問。東北大学特任教授。アクセンチュアでは先端技術リードを務め、USの研究所展開に従事。楽天株式会社では執行役員・楽天技術研究所代表として世界のR&Dを統括。APEC(アジア太平洋経済協力)アドバイザー。企業情報化協会 AI&ロボティクス研究会委員長 森正弥氏に聞く「大学におけるAIデータサイエンス教育」Society5.0に向け、自動運転やキャッシュレス、遠隔医療・介護、遠隔教育など、生活全般をスマート化した「スーパーシティ」を実現すべく、産業界でもAIやビッグデータの活用が加速化している。その人材を育成する高等教育機関に対して期待することについて、産業界におけるAIに関する研究開発の第一人者である森正弥氏に聞いた。

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