カレッジマネジメント223号
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22政府は2019年6月、「AI戦略2019」の中でAIを使いこなせる人材を年間50万人育成することを目標に掲げ、そのために、標準カリキュラムや教材の開発といった教育改革を推進しつつある。確かに、近年IoTやAIの普及には瞠目すべきものがあり、社会実装の試みが急速に広がっている。我々はすでにAI技術が基盤となる新たな社会へのとば口に立っていると言っていい。そんな歴史的転換期を前に、AI基盤社会を生き抜く力を備えているかどうかを問うだけでは十分であるとは言えない。より積極的に且つ戦略的に、AIのメリットを十分に活用できる力を備えているのか、少なくともそのための準備ができているのかを真剣に問うべきだ。その問いに答えを出す責任の一端は、言うまでもなく、社会の負託を受けて高度な教育研究活動を営む大学にある。本稿では、そうした社会的変化と社会的ニーズをいち早く感知し、文系・理系の壁を越えて全学的にAI活用人材の育成に乗り出している関西学院大学(以下、関学)の事例を紹介したい。詳細は後述するが、関学のAI活用人材育成プログラムは、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)との包括的な産学連携AI共同プロジェクトを推進する中で開発されてきたものだ。しかも、現場における「AI活用」を担うことのできる人材育成を特徴としている。プログラム開発意図や目標・内容について、村田治学長、そして実際にAI活用人材育成プログラムの開発に当たった巳みわ波弘ひろよし佳・理工学部教授にお話をうかがった。関西学院は1889年、キリスト教主義に基づく全人教育を理念とし創立されたが、創設時はわずか教師5人と生徒19人の小さな学校にすぎなかった。それから約130年を経た現在、7つのキャンパスに設置された11学部・14研究科に加え、高等部、中学部、初等部、幼稚園、インターナショナル・スクール等を擁し、約2万7000人の学生・生徒や1000名を超える教職員を抱える総合学園へと成長した。これまでに輩出した同窓生は22万人を超える。まさに日本を代表する私立学校の一つだ。それらを支えてきたのは、長い歴史の中で培ってきた伝統であることは明らかだが、それだけにとどまらない。時代の先を読み、新たな学校・大学のあるべき姿を追求し続けてきた長期戦略が機能してきたことも見逃してはならない。関学は、2010年に国際学部を開設、2014年には文部科学省の「経済社会の発表を牽引するグローバル人材育成(GGJ)」(全学型)、「スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)」等の採択を実現させる等、国際化を大きく進めてきた。そうした実績を基盤に、2018年3月には「Kwansei Grand Challenge 2039(KGC2039)」が策定されている。創立150周年を迎える2039年までの20年間を見据えた「超長期ビジョン」(ありたい姿・あるべき姿)と、前半10年間(2018〜2027)の方向性を定めた「長期戦略」からなる将来構想だ。興味深いのは、未来予測に基づく演繹的アプローチがとられリクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 2020次代を見据えた分野横断型「AI活用人材」育成プログラムの開発関西学院大学2039年の世界から描く長期戦略──理系再編とAI人材育成2CASE
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