カレッジマネジメント223号
25/66
25リクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 2020ことの重要性を強調するという。例えば、一見AIと無縁であるかのように思える法学部であっても、司法や行政の場でのAI活用はこれから重要になってくる。「AI×〇〇」によって専門性をパワーアップし、新しい価値観を生み出してほしいと巳波教授は期待する。プログラムで育成を目指すスキルは図2の通りだ。AIやIT、データサイエンスに関するスキルだけでなく、論理的思考力、課題解決力といったビジネス基礎スキルの獲得も想定されている。つまりは、「課題」に対して、様々な知識を組み合わせ、他者と協働しながら実際にAIをいかに活用していくのか、問題解決に向けて総合的にアプローチできる人材となるよう設計されている。もちろん、このプログラムの成果について、育成されたAI活用人材が社会で今後どう活躍するかを見るまでは確定的なことは言えない。しかし、関学にとって日本IBMとのAI共同プロジェクトが一つの画期となったことは間違いない。今後の社会の行方を左右するAI技術やその教育を大学に導入する覚悟を明確に表明するものだからだ。日本IBMとのAI共同プロジェクトでは、既にキャリア支援分野におけるAIの実装も行っている。キャリアセンターがWatsonを用いた「KGキャリアChatbot」を開発し、学生から来る質問の8割に適切な回答を与えているそうだ。このように高い回答率のAIを実現するためには、AIにどんな質問を与えて学習させていくのかがカギとなる。学生からどんな質問が多く、どのように回答すべきか分かっているのは現場の人間だけだ。つまり、より良いAIを実現するためには、現場の人間がAIを理解して活用できなければならないと村田学長は語る。AI技術の変化は極めて速く、今後ますますAI活用人材育成が重要性を増すに違いない。入試説明会でも高校生からAI教育についての質問が出るし、保護者の関心も高いと村田学長は言う。ただ同時に、関学が目指すのはAI活用人材の育成だけではないことを学長は強調する。これまで関学が強みにしてきたグローバル化や就職支援をさらに強化していくことに加え、2021年に理系4学部が開設されるのを機に理系人材育成にも力を入れていきたい、それは課題となっている日本社会の生産性向上にとっても重要だと村田学長は語る。さらに、2019年には関学の卒業生が身につけるべき10項目からなる知識・能力・資質を「Kwanseiコンピテンシー」として定め、長期戦略(2018〜2027)に掲げる「質の高い就労」「学生の質の保証」「学修成果の修得」の実践に向けて動き出している。総じて、関西学院大学の目線は未来を生き抜く学生を育てることに焦点化されていると言える。その先に見えるのは、スクールモットーであるMastery for Service(奉仕のための練達)を実践する関学人の姿だ。(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)特集 AI・データサイエンス教育と大学文系・理系を問わず、AI・データサイエンス関連の知識を持ち、さらにそれを活用して、現実の諸問題を解決できる能力を有する人材AI活用人材図2 AI活用人材育成プログラムで育成するスキル一覧AI活用人材育成のその先へ・AI(人工知能)に関する知識を保持し、かつ、実際のアプリケーション開発に有効に反映する力人工知能活用スキル・ソフトウェア、ハードウェア、ネットワークに関する知識を保持し、かつ、実際のシステム開発(プログラミング)に有効に反映する力プログラミングスキル・IT関連のプロジェクトにおいて、コスト、コミュニケーション、時間、人的資源等の要素を統合的に管理する力プロジェクトマネジメントスキル・統計解析に用いられる多様な分析手法に関する知識を保持し、かつ、データを意味ある形に加工し、適したツールを選出して統計解析を遂行できる力統計解析スキル(データ分析手法)・情報処理、統計学等の情報処理系の知識を保持し、活用できる力統計解析スキル(数学・統計知識)・コミュニケーション力、論理的思考力、課題解決力といった、業種や業界の垣根を越えて通用する、ポータビリティのある(≒持ち運び可能な)力ビジネス基礎スキル(業務知識)・業界のバリューチェーン(原材料の調達から製品・サービスが顧客に届くまでの一連の企業活動)を理解し、ビジネス課題の整理/解決に結びつける力インダストリスキル(業界知識)ITスキルAIスキルデータサイエンススキルビジネススキル※対象外
元のページ
../index.html#25