カレッジマネジメント223号
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29リクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 2020が、数学が苦手な学生もやりやすいという判断による。上林学部長は「私達の学部では、文系であることは決してハンディになりません」と断言する。IT技術者はIT分野のみで活躍するわけではなく、製造業からも、卸売小売業からも、金融業からも求められる。特定の業界のみから求人があるわけではない。データサイエンティストは数学に秀でた専門人材というより21世紀のナレッジワーカーであり、もはや「文系」「理系」と分けて考える時代ではない。カリキュラムには、こうした理念が見事に反映している。データサイエンスをめぐる武蔵野大学の取り組みについて、2点ほど追記すべきことがある。ひとつは、大学院レベルのデータサイエンスの学びが提供されるようになることだ。2021年4月にデータサイエンス研究科(修士課程)が設置され、国際的なエキスパート、研究者、R&D人材の育成がスタートする。今ひとつは、全学展開である。2020年度からAI活用科目の必修化等、AIを活用する力を育むためのカリキュラムが全学部で一斉に始まった。2019年1月に設立したMUSIC(Musashino University Smart Intelligence Center)を拠点に、学生と教員がAIと共存共栄し、多様な学びに対応できる大学を目指す。内閣府が提示した「AIを有効かつ安全に利用できる社会=AI-Readyな社会」という表現を用いれば、「AI-Ready-University」が今の武蔵野大学のビジョンだ。なお、上林学部長は、MUSICのセンター長でもある。総じれば「データサイエンス&AIの裾野を広げ、高度も上げる」といったところだが、武蔵野大学の改革はそれだけにとどまらない。2010年度に導入した全学共通教育「武蔵野BASIS」についても、SDGsやグローバル、そしてAIといった概念を組み込みながら再構成できないかということが検討されているようだ。武蔵野大学は2016年に新しいブランドステートメント「世界の幸せをカタチにする。」を宣言した。西本学長は「武蔵野大学では、学問も学ぶけれども、何より生き方を学ぶ。生きとし生けるものが幸せになるために、自分はどう生きていくべきかということを学ぶ。そういう大学であってほしいと思っています」と言う。そして次のようにも語ってくれた──「本学がベースに置いている仏教も、仏陀が当時の人々の苦しみが何かということをあらゆるデータを集めながら考察し、それを乗り越えていく道を探ったというところが原点になっています。そういう意味で、仏陀は2500年前のデータサイエンティストだと思うわけです」。学長によるこれら2つの語りを重ね合わせることで浮かび上がる景色は興味深い。恐らく武蔵野大学がデータサイエンスに注力するのは、必然の流れだったのだろう。世界の幸せを求めて成長し続けようとしている武蔵野大学に、データサイエンスは大きな力を与え始めている。(濱中淳子 早稲田大学教育・総合科学学術院教授)特集 AI・データサイエンス教育と大学プログラミングリテラシー情報分析・創出・表現技法AI×データ×メディア教育の基礎1年次1、2学期コンピューターやクラウドサービスの操作スキル入学前学習プログラミング・情報技術法1年次3、4学期入学前から1年次にかけて集中開講段階的にステップアップ❶データリテラシー (スプレッドシート) ・ 目的に応じてデータを収集・管理 ・ 編集や基本的な データ処理関数の適用 ・ 表やグラフを使って図式化❷情報リテラシー (プレゼンテーション) ・ 学習教材等の検索 ・ 情報を論理的、図式的に要約 ・ プレゼンテーション技法の習得❶メディアリテラシー ・ SNSを利用した情報収集と情報発信 ・ メディア情報に関するリスクと 適切な回避 ・ 著作権のルールを知り、 情報の信頼性を見分ける❷人工知能リテラシー ・ 簡易的な人工知能ツールの体験 ・ 人工知能とヒトの類似点と相違点 ・ 人工知能には代替困難な職業の考察データ・情報リテラシーメディア・人工知能リテラシースプレッドシート(クラウドサービス)■データ・情報リテラシー■メディア・人工知能リテラシー選択必修図表3 AI-Ready-Universityの1年次カリキュラム大学院の設置、そして全学展開へ:AI-Ready-University

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