カレッジマネジメント223号
33/66

33リクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 2020欠損とされてしまうといった連鎖も容易に起こり得るので、教員という概念を専門学校の感覚ではなく冷静に大学設置基準に照らして捉えることはとても大切です。 専門職大学特有の事項として、図3に掲げる4つの科目群があります。このうち、申請上に困難が多いのは展開科目です。「専攻に係る特定の職業分野に関連する分野における応用的な能力であって、当該職業分野において創造的な役割を果たすために必要なものを育成する」という趣旨に照らし、直接はその職業に関連せず、付加価値を生ずる要素を職業ごとに見極めて設定するわけですが、その職業分野に無関係ではいけない。このあたりの匙加減が非常に難しい。職業に寄せすぎれば「それは職業専門科目である」と指摘されてしまい、職業から離れすぎると「専攻分野の業界等に対応しているか不明確」と言われてしまう。科目体系が崩れると単位数のバランスが崩れ、卒業単位が124単位をはるかに超える教育課程となってしまい、学生の履修に無理が生じてしまう。もちろん展開科目そのものがその職業や業界が抱える課題を解消する方向性を示すものになるので、大学としての個性が表れやすいという側面もあるのですが、いずれにせよ申請上の困難は大きい箇所です。端的に言えば、ただでさえ書類が多い設置認可申請(20~28種類)よりも書類が多い(30~35種類)ということを確認しておく必要があります。大学として認可できるかに加えて、専門職大学として固有の審査項目もある。追加されている主なものは実務実習と実務家教員に関わる書類ですが、前述した教員審査は、大別すればアカデミックな教員と実務家教員の2種類いるわけなので、それぞれに審査の観点がある。ということは、それぞれを審査するために必要な書類が設定されているということ。そのほか専門職大学固有の審査があるにも拘わらず、「申請に必要な書類が十分作成できていない」という審査コメントもあります。それに加えて、書類同士が相互に関連しているものが多いため、前後左右に関連する文脈や内容で辻褄が合っていないといけない。申請内容と書類間の整合性は非常によく見られるポイントです。このあたりは、初めて申請に取り組む学校が苦戦されることが多い。審議会からの指摘に適切に対応することも含め、書類の内容に精通した体制が整っていないとなかなかクリアできないのが実情です。図1に挙げたように、書面での審査意見が2回入り、補正で対応していくのですが、これができなければ取り下げになります。長い審査プロセスの中で、書類不備や対応体制不備は大きな枷となります。何故専門学校を創るのではなく、専門職大学なのか。何故大学ではなく、専門職大学なのか。必要な視点は、専門職大学で職業教育を行う実践教育とそれを支える「学科目区分内容単位数(4年制)単位数(2年制)基礎科目生涯にわたり自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を育成するための授業科目20〜10〜職業専門科目専攻に係る特定の職業において必要とされる理論的かつ実践的な能力及び当該職業の分野全般にわたり必要な能力を育成するための授業科目60〜30〜展開科目専攻に係る特定の職業分野に関連する分野における応用的な能力であって、当該職業分野において創造的な役割を果たすために必要なものを育成するための授業科目20〜10〜総合科目修得した知識及び技能等を総合し、専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を総合的に向上させるための授業科目4〜2〜図3 専門職大学における科目の整理制度独自の科目構成:展開科目の意義ポイント③書類:種類の多さポイント④学問分野:専門職大学としての職業教育の奥行を意識ポイント⑤第2特集:専門職大学制度の挑戦

元のページ  ../index.html#33

このブックを見る