カレッジマネジメント223号
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50大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置付けに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索する中、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、伝統の「人格教育」と現代性の高い「実学教育」との融合を図る高千穂大学の取り組みについて、寺内一学長にお話をうかがった。高千穂学園の起源は、1903年開校の高千穂小学校だ。創立者の川田鐵彌氏が、人格教育を重んじる発想で、小学校から作り上げていった経緯がある。高千穂大学も、高等教育機関として商学、経営学、人間科学といった実学を通じて社会に貢献する人材る存在です。担当教員がかなり密接な形で学生と関わり、一人ひとりの成長を支えていくのが、本学のゼミナール教育の大きな特徴といえます」(寺内学長)。高千穂大学で近年の課題認識とされてきたのは、学生の目的意識の希薄さだと寺内学長は言う。「入学時やゼミIでの調査を見ると、入学時にきちっとした目標を持っている学生と、明確な目標のない学生とに大きく分かれます。商科大学時代は、税理士になりたいなど目標のはっきりしている学生が比較的多かった。でも、経営学部、人間科学部と拡大するのと時を同じくして、そういった明確な目標を持っていない学生が、商学部も含めて、多く見られるようになってきました」。こうした学生には、自分はどういう長所があり、将来、自分はこのような方向に向かうべきだということを、より明確にすることが重要と考えられた。そこで2002年度入学生からスタートしたのが「アドバイザー制度」で、入学から卒業まで、学生全員に専任教員がアドバイザーとしてつくものだ。の育成を掲げつつ、より根本には、人を育てる人格教育という創立以来の教育理念があると、2019年度に就任した寺内一学長は説明する。「この教育理念のもとに、『常に半歩先立つ進歩性』という学風の指針があります。さらに、指針を具現化するのが学風の目標で、『偏らない自由人』『気概ある常識人』『平和的国際人』の3つ。これらが高千穂大学の教育の礎と考えていただければいいと思います」。戦後の学制改革による新制大学としては、商学部商学科の単科大学「高千穂商科大学」としてスタートし、現在は3学部の「高千穂大学」になっている。少人数教育も開学以来の伝統で、学年定員は3学部合計で550人。その規模を活かした「先生との近さ」「面倒見の良さ」「ゼミナール教育」等を特徴として打ち出している。特に初年次教育の「ゼミI」は全学部必修で、10~15人の小クラスで学び方の基本やコミュニケーション能力を身につける。「大学に入学したばかりの1年生にとってゼミIの担当教員は、頼りになリクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 202026高千穂大学学修成果の可視化に取り組み、学生の成長実感を実現寺内 一 学長高千穂商科大学から高千穂大学へ目的意識の醸成をサポートするアドバイザー制度

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