カレッジマネジメント223号
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57階的移行」、終息後を「ポストコロナ」とし、大学の課題について考えてみたい。多くの大学がウェブサイトに新型コロナウィルス感染症に関する特設ページを設けている。学生への注意喚起に始まり、2月下旬から3月上旬にかけて卒業式の中止や縮小を伝えている。その頃、外国人留学生と留学中の日本人学生に対する指示・支援も大きな課題となっていた。状況が大きく動いたのは感染者数が急速に増加を始める3月中旬以降で、入学式の中止と新年度の授業開始時期の延期が相次いで打ち出され、学生の構内立入禁止措置も講じられるようになった。この時点では、授業開始を4月下旬とする大学も多かったが、4月7日の宣言発出前後から、多くの大学が開始を5月の連休明けまで遅らせ、開始後当分の間または春学期を通して遠隔授業とする方針を打ち出した。教職員も在宅勤務が基本となり、会議はオンラインに変わり、大学施設内での研究活動もほぼ停止状態となった。リモートワーク体制の整備状況や業務特性の違いで勤務実態に差が生じ、非正規雇用の教職員の業務や処遇に対する配慮も課題となった。この段階で大学が最大のエネルギーを注いだのは「遠隔授業による教育」と「学生の支援」であろう。遠隔授業は、学生が授業の動画や講義資料等を都合の良い時に視聴・閲覧する「オンデマンド型」とテレビ会議システム等を用いた「リアルタイム(同時双方向)型」に大別される。その選択は教員に委ねられるが、大学はソフトウエアやテレビ会議システムの導入、LMS(Learning Management System:学習管理システム)の整備、ネットワークの増強に加え、遠隔授業に関するオンライン説明会の実施、コンテンツ作成の支援等を行うことで、授業開始に備えた。また、端末の保有や通信の状況等学生の学習環境をアンケートで確認し、支援措置を講じた大学も多い。芝浦工業大学では4月早々に、前期の授業を遠隔授業により実施することを決めた。教育イノベーション推進センターの榊原暢久教授は、初回の学内説明会で、「遠隔授業で押さえるべき点は3点。初めに達成目標の確認を、習得の具体を確認できる機会確保を、質問や意見交換の機会確保を」と呼びかけたという。そのうえで、「現在までは順調にリクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 2020緊急時対応段階的移行ポストコロナ大学全体・卒業式・入学式の中止または縮小・キャンパス閉鎖または立入規制・イベント中止・教職員は原則在宅勤務・学内会議のオンライン化・キャンパス立入規制の段階的解除・図書館、体育施設、食堂・売店等の利用の段階的 引き上げ・イベントの段階的再開・出勤と在宅勤務の併用・オンライン会議と対面会議の併用教 育・授業開始時期の延期・学年暦の改訂・遠隔授業を基本とすることの決定・遠隔授業の準備 (ICT環境整備、教員説明会、学生支援)・春学期を遠隔授業だけで通すか否か・対面授業を開始する場合の時期と方法・春学期の成績評価の方法・遠隔授業の充実、対面・遠隔併用による新たな授業 方式検討・2021年度入試の時期・方法学 生・感染防止のための注意喚起・課外活動の中止・就職活動支援(特に不安の解消)・経済的に困窮する学生への支援・新入生へのケア・3密を避けた学生生活の指導・課外活動の段階的引き上げ・就職活動の支援(特に不安の解消)・経済的に困窮する学生への支援・これらを含めた学生相談の機能強化研 究・学内施設での研究活動の原則中止・学会、研究会等は原則オンライン・研究活動の段階的引き上げ・3密を避けた実験・観察、研究室運営国 際・渡航・入国制限措置への対応・受入留学生のケアと帰国支援・派遣留学生のケアと帰国支援・制限緩和を睨みながらの受入・派遣の段階的再開・受入・派遣留学生に対する指導・支援ポストコロナの大学を構想するうえでの視点 教育の内容と方法  (遠隔と対面) 研究のあり方 学生支援 キャリア支援  (通念採用?) 課外活動 新たな国際交流 大学施設のあり方 大学運営と働き方※3密回避が続くのか、終息により常態化が避けられるのかによって大きく異なる3つのフェーズにおける大学の課題困難を乗り越えながら始まった遠隔授業

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