カレッジマネジメント223号
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58リクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 2020進んでいる。成績評価をする段階、成績評価が出揃ったときに課題が明らかになる可能性があるが、必ずしも遠隔授業の実施によって生じた問題ばかりとは言えない」と述べる。遠隔授業の導入にあたって、事例報告や課題共有が大学を超えて盛んに行われたことは注目すべきである。なかでも国立情報学研究所が3月26日に開始し、5月29日までに9回実施した「4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム」には高い関心が寄せられている。学生の支援については、履修関係をはじめとする数多くの問い合わせへの対応、就職活動に関する相談や不安の解消、学生の孤立を防ぐための働きかけ等が大きな課題となっている。とりわけ一度も登校することなく遠隔授業が始まった学部一年生に対するケアは重要である。その中でも最も深刻な問題は、アルバイト収入が断たれたり、保護者の所得が減少したりして経済的困難に陥る学生が増加していることである。既に多くの大学が個別に支援策を講じており、国も学びを継続できるよう「学生支援緊急給付金給付事業」を開始した。就学継続を断念することがないよう最大限の支援をしていく必要がある。6月から本格化する「段階的移行」では、「緊急時対応」の3カ月間をさらに上回る難しい判断と実施が大学に求められることになる。これまでは大学が閉鎖され、多くの機能が停止された状況で、授業開始と学生支援に集中することができたが、学生をどのような形でキャンパスに戻すのか、図書館、体育施設、食堂・売店等の利用をどう再開するのか等難しい対応が迫られる。教育面では、春学期を遠隔授業で通すのか対面授業を加えるのかの判断に加え、教室の感染対策、実験・実習を伴う授業の扱い、成績評価の方法等の問題に道筋をつける必要がある。研究活動の早期再開を求める声は日増しに強まっている。実験・観察データの継続的収集が必須の分野における中断の影響は計り知れない。大学院生の博士・修士論文の執筆も大きな影響を受けているだろう。研究室や実験室という狭い空間で感染防止を徹底しながら、研究を再開させるために克服すべき課題は多い。課外活動については、教職員の目が届きにくいこと、部室が3密の状態になりやすいこと、活動後の飲食がさらなるリスク要因となり得ること等を考え合わせると、感染防止を徹底しながら活動を段階的に引き上げる際のハードルは高い。また、世界各国・地域が渡航・入国制限措置を講じる中、留学生や研究者の受入・派遣はほぼ止まった状態にあり、国際交流が本格的に再開されるまでにはさらに長期を要するものと思われる。これまで推進してきた大学のグローバル化をどう持続・発展させていくのかも重要な課題である。2021年度入試も大きな影響を受ける。多様な選抜方式が広がるなか、それらを如何なる形で実施するのか、高校の休校や社会的距離を考慮して一般選抜をいつどのように行うのか、受験生の不安の払拭を含めて対処が求められている。世界的な経済危機がもたらす影響が社会のあらゆる分野に顕著に現れるのもこれからであろう。2020年4-6月の日本の実質GDP前期比年率はマイナス20%を超えるとの予測も示されており、倒産や失業者の増加、所得の減少等、深刻な状況が長期にわたり続く可能性も指摘されている。学生の就職状況に関しては、2021年卒は既に選考が進む一方で、採用予定数を未定としている企業もあり、今後抑制に転じる可能性も否定できない。内定を得ていない4年生、インターンシップの準備を始める3年生等に対するきめ細やかなサポートが例年以上に求められる。労働力人口の減少で売り手市場と言われた就職環境が一挙に暗転するのか、それとも安定的な人材確保の方針が維持されることで採用減が小幅にとどまるのか、注意深く見守る必要がある。家計所得の減少や進学後のアルバイト収入への不安が高校生の進路選択に影響を及ぼし、大学進学率が低下し、国公立志向や地元志向が高まる可能性もある。その一方で、学生をどのような形でキャンパスに戻すのか経済危機がもたらす影響の長期化が懸念される

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