カレッジマネジメント223号
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6新型コロナウイルス感染症により、私たちの社会は、行動様式・生活様式の見直しをはじめ、働き方、産業、医療、教育、観光等あらゆる分野で変革が起こっていく流れが加速していくだろう。筆者の仕事上身近な話で言えば、筆者は、新型コロナウイルス感染症対策として、大学・高等専門学校(高専)における遠隔授業の推進に力を入れているが、デジタル技術を用いた遠隔授業(※1)の導入を迫られた現場の環境は、これまでICT(情報通信技術)に不慣れな教員のICTリテラシーを単に高めただけではなかった。毎回の授業をとおして学生に理解してもらいたいことは何か、どのような気づきを狙っているのか、それはどのような教育方法により効果的に達成できるか、といった大学教育の授業そのものを見直す機会になっている、との報告を多くの大学教員よりうかがっている。期せずして、大学教育、とりわけ授業そのものを見直す、変革する機運が高まっている。筆者は、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の延長が決定される最中、この原稿を執筆しているが、連日のように、新規感染者数、死亡者数、陽性率、実効再生産数等の各種データ、人との接触8割減等の取り組みが報道されている。国や専門家は、新型コロナウイルス感染症の影響(データ)を適切に捉え、分析・予測し説明できること、私達国民はそれを適切に理解、判断し、行動できることが求められている。多くの国民が統計やデータサイエンスの基礎的素養を身につけていると、一人ひとりが適切な理解のもと行動様式・生活様式の見直しに大きく貢献できるだろう。改めてデータサイエンス教育の重要性を認識させられる。数理・データサイエンス・AI教育の重要性については、これまでも累次の報告書等で指摘されており、そのための取り組みも各所で行われてきた。しかしながら、国を挙げた基本的考え方や役割分担、戦略推進を掲げ、かつ産学官のステークホルダーにインパクトを与えた政策効果の高い施策文書は「AI戦略2019~人・産業・地域・政府全てにAI~」(令和元年6月統合イノベーション戦略推進会議決定)であろう。リクルート カレッジマネジメント223 / Jul. - Aug. 2020新型コロナウイルス感染症と改めて認識するデータサイエンス教育の重要性「AI戦略2019」の策定数理・データサイエンス・AI教育と、その先の大学教育のデジタライゼーション文部科学省高等教育局専門教育課 企画官西山崇志寄稿

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