カレッジマネジメント224号
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技術革新により、産業構造や働き方が劇的に変化することが予想されます。本連載では、領域×Technology=「X Tech(クロス・テック)」に着目し、産業の大きな変化の兆しを捉えていきます。取材協力西脇弘倫氏 株式会社富士経済 ライフサイエンス事業部 第二部 第一課#09 HealthTech(健康とテクノロジー)「健康」不安を解決するヘルステックに高まる期待で変わる産業新型コロナウイルス感染対策による外出自粛や在宅勤務が続き、生活の変化から生じるストレスや、日常の健康に対する不安を感じる人が増えている。そこで今回は、病気の予防や健康管理に最新テクノロジーを活用するHealthTech(ヘルステック)に注目したい。富士経済の調査によれば、 ヘルステック・健康ソリューション関連の市場規模は2022年には3083億円まで拡大すると予測されている。「個人のセルフケアサービスに加え、働き方改革推進により、企業の従業員の健康維持・増進への関心が高まり、健康経営サービスを積極的に導入していることが背景にあります」と、西脇氏はその背景を語る。具体的には、メンタルヘルスサービス、オンラインによるストレス診断サービスが伸びているのだという。「スマートフォンのカメラに人差し指を写すだけで、ストレス状況を数値化してくれるサービスや、スマートウォッチと連携してストレス度を可視化してくれるウェラブルデバイス等、AIやIoT等の先端技術を活かした新たなビジネスも広がっています」ヘルステック産業で特に成長を遂げている市場として西脇氏が挙げるのは、2022年には20億円の市場規模が予測される「睡眠改善サービス」だ。寝つきの悪さや熟睡感の低さといった「睡眠負債」に悩む人に向け、睡眠改善アプリやIT機器等、幅広い業種の企業が参入していると西脇氏は言う。「最近では、母子手帳やお薬手帳、マイナンバーカードを活用し、生まれてから亡くなるまでのパーソナル情報を一元管理できる健康管理ポータルサービスの実証事業が進められ、今後の普及が期待されています」AIやIoT、VR/AR、5G等の最新技術の登場で、業界の垣根を超えて、ヘルスケアに取り組む企業が増えている。ヘルステックの成長には、病院や大学等の研究機関と、行政や異業種企業の連携は欠かせない。「コロナ拡大で健康の価値が改めて重要視される今だからこそ、なぜこのサービスが生まれてきたのか、起点となった課題を見つめ直し、さらなるオープンイノベーションを促進してほしい」と西脇氏は強調する。「人生100年時代」に突入する日本の健康未来はヘルステックが大きな鍵となりそうだ。(文・馬場美由紀)05001000150020002500300035002022年 予測2021年2020年2019年2018年2017年2016年(億円)2,055億円3,083億円出典:株式会社富士経済「ヘルステック&健康ソリューション関連市場の現状と将来展望 2019」025注目検査・健診サービス健康情報測定機器・治療器健康経営サービス健康プラットフォーム&生活習慣改善サポートサービスヘルステック・健康ソリューション関連の国内市場
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