カレッジマネジメント224号
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61リクルート カレッジマネジメント224 / Sep. - Oct. 2020るはずだ、と。ですが、高校から進学してきた学生にこの方法は通用しなかったんです。自分の生活をかけて専門学校に通っている社会人学生が多い環境とは異なり、きっちりとした指導をしなければならなかった。『専門学校と大学の違い』を痛感しました」。急ぎ国試対策も含めた教育へと転換した。すると、わずか2年後の2012年度、理学療法士国家試験合格率は9割を超えるまでに上昇した。そしてそれからというもの、国試合格率は、むしろ森ノ宮医療大学の強みとなっている。直近である2019年度の理学療法士の国試合格率は100.0%(全国平均86.4%)。他の領域についても、看護師100.0%(同89.2%)、作業療法士97.4%(同87.3%)、はり師89.6%(同73.6%)、きゅう師87.5%(同74.3%)と、高水準の合格率を誇っている。巷では、「大学の専門学校化が起きている」という声を聞くことも多い。2019年4月には、実践的な職業教育を行う専門職大学という新しい学校制度も誕生した。機関間の線引きがますます求められるようになるのだろうが、そうしたなか、森ノ宮医療大学は、「専門学校と大学の違い」に敏感な意思決定を行っている。国試対策導入のエピソードもそうだが、さらに今ひとつ、森ノ宮医療大学の代名詞でもある「医療系総合大学」へと発展したのも、もとはといえば「専門学校と大学の違い」を強く意識したからである。専門学校と大学の違いは、まず、取得できる資格の違いに求めることができる。看護領域でいえば、三年制の専門学校では基本的に看護師の資格しかとれない。けれども、四年制大学に通えば、養護教諭一種免許状や保健師免許取得への途が開かれる。また、その違いは、専門の深さに求められるかもしれない。大学の場合、専門学校に比べて、必然的に専門性を究めた教員が多くいることになる。より高度な専門を、科学的根拠に基づきながら、理論という次元で学ぶことができるという点に、四年制大学の強みを見いだすことも可能だ。しかし、森ノ宮医療大学はそれ以上の違いを模索した。1年間長く学ぶことができるとなれば、その時間をどのように活用するか。たどり着いた答えは、次のようなものだった。「専門学校の3年間で他分野のことまで知識を得ようとしても、それは難しいと思います。自分の専門の領域の知識やスキルを獲得するだけで精一杯になってしまう。ですが、さらにプラス1年あるのであれば、その時間を他の医療職種のことを知ることに充てることができます。今の医療はチームで動いています。他の職種の人がどのようなことを考えているのか、何を目指しているのかを知ることはとても大事なことだと特集 進学ブランド力調査 2020図1 志願者数推移なぜ医療系総合大学を目指すのか20202019201820172016201520142013201220112010200920082007(年度)1,0898945303689899251,8081,5291,4902,9782,8234,4513,2993,3049看護学科 初年度入試2臨床検査、作業療法学科 初年度入試44診療放射線学科 初年度入試329933入試臨床工学科 初年度入試18看護学科の入試回数を増やす(他学科と同回数)
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