カレッジマネジメント224号
62/90

62リクルート カレッジマネジメント224 / Sep. - Oct. 2020思います」(清水理事長)。図2で示すように、チーム医療では、複数の医療専門職種がそれぞれの専門性を発揮することで、治療やケアが進められる。連携・協働、チームワークが鍵となる。各職種それぞれの立ち位置や考えを知っておくことは、これまで以上に大事になる。看護学科の学生であったとしても、理学療法学科や臨床工学科、鍼灸学科などの教員から他職種について学ぶことができれば、それはおおいにプラスになるに違いない。一見、森ノ宮医療大学は、ただ拡大することのみを目指しているようにみえるが、決してそうではない。森ノ宮の進化は、チーム医療を前提とした教育環境の充実を目的にした結果なのだ。清水理事長は「今いる学生たちに少しでもいい環境をと考えると、ゆっくりやっている場合ではないんです」と力強く語る。実のところ、経営的な観点では難しい学科もあるという。しかし、医療現場に近い環境があれば、それだけ学習力は高まる。「私たちは、学生のために教育をしていますけれども、同時に将来の患者さんのために教育をしているわけです」。その視線は、大学の外へ、そして未来へ向かっている。交通の便を理由に選んだ立地にも助けられた。開発途中のベイエリアだったため、空き地が多く、新しい学科を作るための土地選びに悩む必要がなかったからだ。開学当時は1区画のみだったが、現在は隣地で4区画を所有している。大学にとって土地選びがいかに重要かを示す好例だといえるだろう。と同時に、地域との連携も重要だ。体育の授業では、大阪市が所有する人工島「舞まいしま洲」のスポーツ施設を有効活用させてもらっている。また、実習面においては様々な基幹病院と連携協定を結んでいる。街の発展とリンクしながら大学も発展しているという自負がある。それにしても、これだけの進化を短期間に遂げる秘訣は何なのか。ガバナンスが利いているのかと考え、尋ねたところ、やはり迅速な意思決定のための仕組みがそこにはあった。図3が意思決定の仕組みである。その大きな特徴は、理事長・幹部が学科で起きていること、考えていることを直接把握し、それを意思決定に組み込むことを可能にするあり方だ。小規模であることの強みを最大限活かしたかたちだといえるだろう。ただ、特記すべき特徴はほかにもある。2つほど触れておきたい。ひとつは、短期間での目標見直しだ。図に示す会議は頻繁に開催されているが、驚くべきはそこで話し合われたことがすぐ実行に移される点だ。例えば、5年間というスパンで作られた中期計画は3カ月に一度進捗状況を確認しているが、うまく進展していない目標はすぐに切り替えるという。現状にあった目標をその都度見直し、設定し直したほうが、前進するという判断に基づいている。もうひとつは、「コラボレーション」という感覚を前提にしている点だ。教員はそれぞれの専門性があり、言ってみれば個人事業主に近い感覚があると思っている。そのようなメンバーの集まりなのだから、組織を作り上げると拡大路線ではなく教育環境の充実短期間での目標見直しとコラボレーション図2 チーム医療と森ノ宮医療大学の教育(例)

元のページ  ../index.html#62

このブックを見る