カレッジマネジメント224号
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63リクルート カレッジマネジメント224 / Sep. - Oct. 2020いうより、一緒に事業を行っているという心持ちで大学を動かしたほうが望ましい。そして実は職員も同じ感覚だという。学科など、現場が考えたものに対して、理事長・幹部は、費用面を除けば、基本的に「ノー」とは言わない。将来の患者さんのためにと大きな目標を共有しているからこそうまくいっているという側面もあるのだろう。「本当に『協働している』という状況です。ガバナンスが利いているというよりは、自律的に取り組んでもらっているということだと思います」と理事長は述べる。また、なにより荻原俊男学長(2011年4月~)の存在は欠かせない。大阪大学医学部附属病院の元病院長という経歴を持つ荻原学長だが、現在は森ノ宮医療大学の発展のために全力を費やしている。清水理事長は「協働性と柔軟性を大事にする学長のスタンスが、教職員に伝わっているのだと思います。遺憾なくリーダーシップを発揮していただいていることに、ただただ感謝しかありません」と言う。リクルート進学総研が実施する進学ブランド力調査において、森ノ宮医療大学は関西地区の看護・医療・保健・衛生の分野別志願度ランキングで、2年連続トップとなっている。もともと教育には自信があった。知名度があがれば、自分たちの教育に関心を持ってくれる人も増える。理事長は、それが嬉しいという。「これからは、研究にも力を入れていきたいと思っています。さらに総合力を高め、『医療系へ進みたいのであれば、まずは森ノ宮のオープンキャンパスに行けばいい』と言われるような大学を目指したいですね。つまり、1つのスタンダードになることが目標、とでもいえるでしょうか。そういう意味では、もしかしたら、私たちはオープンキャンパスの来場者数のトップを目指しているのかもしれません」(清水理事長)。自分たちが外の評価についていくためにも、気を引き締めて教育環境の改善に努めていく。森ノ宮医療大学は、新しい段階に入りつつあるようだ。学部・学科の全体的な見直しとして、改組も検討しているという。これほどまでに進化できた理由を理事長に尋ねたところ、「運かもしれない」と笑顔で答えた。しかし、運は努力する人の味方をするという話もある。これから先、森ノ宮医療大学はどう変わっていくのか、今から楽しみである。(濱中淳子 早稲田大学 教育・総合科学学術院教授)図3 意思決定の仕組みトップであるとともに、スタンダードになることを目指す特集 進学ブランド力調査 2020理事長、学長が構成員となっている学科会議等に陪席して現場の意見にも耳を傾ける理事会センター組織事務局教授会管理運営会議大学経営・質保証会議重要事項を迅速に審議学園経営・質保証会議主要理事等で月1回開催教職共同の管理職委員会組織大 学ボトムアップで提案された内容もここで検討。教員組織と事務組織の連携。理事長・幹部が業務全般を直接把握、戦略的意思決定ができる体制、現場からのアイデアを円滑に生かす運営を両立
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