カレッジマネジメント224号
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68リクルート カレッジマネジメント224 / Sep. - Oct. 2020流通経済大学(以下、RKU)は日本通運株式会社の資金の拠出で、1965年に設立された大学である。経済学科のみの単科大学として始まり、現在は5学部9学科5大学院研究科、約5500名の学生を有し、社会科学系を中心とする中規模大学として発展している。龍ケ崎(茨城)と新松戸(千葉)の2キャンパスは、必ずしも立地に恵まれているとは言えないが、これまで順調に入学定員を満たしている。この10年の志願者の推移を見ても(図1)、特にこの5年ほどは高校生からの人気も大きく向上している。順調の背景にどんな秘訣があるのか、野尻俊明学長にお話を伺った。 創設時は日本通運が出資して法人を設立し、最初の数年間は全国規模で学生募集をしていた歴史を持つ。運送業の跡取り等が主なターゲットで、そのネットワークは現在も大きい。それに加えて、長い時間をかけて築いてきた信頼関係が大学を良い方向に動かしてきたのではないかと学長は話す。例えば現在も、大学入試の混乱やコロナ禍等、「これからの大学はどうなるのだろう」という高校生や高校の不安は大きいが、自大学の情報だけでなく、日本の高等教育に関して自分達が知っている情報を積極的に知らせる等、丁寧に信頼関係を構築してきた。相手側の視点に立てば考えられることだが、そうした姿勢で高校と付き合う大学は必ずしも多くないのではないか。学生目線に立つことは、2004年に新松戸キャンパスを開設した時から導入したキャンパス選択制にも象徴的に表れる。学生が入学時点で学ぶキャンパスを自由に選ぶという画期的なアイデアで、最初に聞いた時にはとても驚いた記憶がある。新松戸キャンパスを作る際に、2つのキャンパスの役割について、教養課程と専門課程で分ける案、学部学科によって分ける案も検討したが、当時も学長だった野尻学長は「教員の都合で運営せず、学生目線でやっていこう」とキャンパス選択制を提案し、当時の4学部教授会を回って積極的に議論を重ねた。極端に片方のキャンパスへの希望が偏った国際観光学科と流通情報学科、来年度からは社会学科も新松戸キャンパスのみになるが、一定の歴史的な役割が大きかったと話す。学相手目線で信頼を得る野尻俊明 学長徹底的な学生視点と建学の理念の追求図1 近年の志願者数の推移01000200030004000500060007000800020202019201820172016201520142013201220110200400600800100012001400160018002000(人)(人)(年度)【学科別志願者数】【合計志願者数】スポーツコミュニケーションスポーツ健康科学自治行政ビジネス法流通情報国際観光社会経営経済合計流通経済大学C A S E3

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