カレッジマネジメント224号
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69リクルート カレッジマネジメント224 / Sep. - Oct. 2020生からすれば、通いやすいキャンパスを選べるのは大きな魅力だが、同様の取り組みをする大学はほとんど聞いたことがない。経営レベルの決定であっても徹底的に学生の視点に立ち、行動できる同校ゆえの戦略である。RKUは、流通革命が叫ばれた時代に、そうした社会・経済を支える人材を育てることを建学の理念とし、日本の安定した社会基盤の骨格を支える堅実で健全な人材を育てることを重視してきた。最も特徴的な流通情報学部は1996年に設置したが、数年前までは募集で苦労していたという。物流=トラックの運転手、というイメージが強く、高校生の母親が受験に反対するケースもあった。東日本大震災やコロナ禍等、経済が予定通りに動かないことを経験してみて初めて、安定した物流やロジスティクスがいかにインフラとして社会を支えているのかが理解され、耳馴染みのある言葉になっていった。そういう意味では、「大学の努力というよりも、世の中が変わったことも高校生から選ばれるようになった理由として大きい」と学長は話す。一方で学長は、いずれはこの分野の重要性が見直されるようになるとの思いも持っていたという。中国や東南アジアの優秀な留学生から根強い人気があり、「日本のスマートで洗練されたロジスティクスを学び、国に帰ると役に立つ、ロジスティクスを学ぶならRKUだ」と選んでくれるからである。現在は日本人の志願者が増えてきたが、今後も留学生枠を作る等して、グローバルに活躍する人材を育て続けたいという。近年は研究機能強化にも力を入れる。2008年から3年間、経済産業省の産業人材育成プロジェクトで、物流分野の産学連携による人材育成の資金を獲得し、2018年には文部科学省の研究ブランディング事業にも採択された(図2)。ロジスティクス分野の研究拠点と人材育成を行うものだが、実は日本国内では、この分野を専門的に研究する若い研究者がそもそも少ない。たとえ現在は物流の研究を専門にしていなくても関心を持つ若い研究者を囲い込み、積極的にステークホルダーとの情報交換、情報発信、プロモーション特集 進学ブランド力調査 2020超スマート社会(第5期科学技術基本計画)「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かく対応でき、あらゆる人が質の高いサービスが受けられる…社会」の実現に不可欠な高度なロジスティクス高度なロジスティクス実現に向けての、研究拠点形成と人材育成プロジェクト──ロジスティクス・イノベーション・プロジェクト──「ロジスティクスの未来をつくる大学」へSociety 5.0の実現図2 私立大学研究ブランディング事業の事業内容人材育成研究拠点の形成■産学連携プログラムによる学生の育成と業界への輩出■留学生を対象としたプログラムの検討■小学生、中学生、高校生への広報、啓発■社会システムと高度ロジスティクス検討WG■社会を支えるロジスティクス検討WG■新たな分野でのロジスティクス展開検討WG■地域活性化とロジスティクス検討WG■地域を支えるラストワンマイル検討WG産学連携人材育成コンソーシアム社会システムとロジスティクスコンソーシアム地域とロジスティクスコンソーシアム本学ロジスティクス関連客員講師88名(行政、業界団体、メーカー・卸・小売・物流・情報システム等企業)日通総合研究所、日本マテリアル・ハンドリング協会物流博物館茨城県トラック協会、茨城県、龍ケ崎市日本ロジスティクスシステム協会、日本物流団体連合会国・地方公共団体、企業・業界団体との連携による推進物流・ロジスティクス分野の際立った特徴と理解を得る難しさ

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