カレッジマネジメント224号
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70リクルート カレッジマネジメント224 / Sep. - Oct. 2020連携・研究を行っていかなければ、研究拠点としての将来性がなくなるという危機感を抱き、取り組んでいる。学生を育てていくうえでも、現場経験をしてその楽しさと難しさを実感することは重要で、実践科目を多数配置し、企業の担当者を講師に招き、現場で起きていることを知ってもらう機会を大切にしている。物流がなぜ大切で社会でどのように役に立っているかを知ることで、より主体的に学ぶきっかけにもなる。物流現場は危険な場所もあり、学生を受け入れることに慎重な企業もあるが、開学以来、産学連携を重視し、企業とコミュニケーションをとってきた実績があるがゆえに、こうした生きた学習が可能になっている。このように建学の理念に直結した流通経済分野を大切に育て、この分野をリードしつつも、同時に社会の変化に応じて育成人材像を少しずつ変えてきた。そのことは学部学科の新設状況からもうかがい知ることができる(表1)。1988年、経済優先の高度成長期のあとには豊かな人生を歩むことが重要と考え、社会学部を作った。同じ入試をしているにも拘わらず、社会学部で4年間学んだ学生は他の学部の学生とは異なり、多様な価値観を持つ特徴があるという。1993年には国際観光学科を作った。開学後4~5年たった頃に米国大手ホテル企業から日本通運を介して、旅行や観光関係の学部を設置しないかという打診があったそうだが、当時は資金がなくて実現できず、大学としての基盤が整ってきたタイミングで、念願の観光系学科を作ったという。この学科に入学する学生は、卒業後は観光・旅行業に就職したいという思いが一貫して強い特徴がある。2001年には法学部を作り、企業法務や地方行政を担う人材養成を展開し、さらに2006年にスポーツ健康科学部を作った。この学部は、やはり何らかの形でスポーツに携わる仕事がしたい学生が多い。2004年にキャンパス選択制を導入したが、徐々に新松戸を選択する学生が増えてきたため、龍ケ崎キャンパスをどうするか、2013年当時の将来構想委員会で検討した。龍ケ崎の環境を活かした学部構成について様々な案を検討し、2017年にスポーツコミュニケーション学科を作り、今年で4年目となる。子供のころからスポーツをやってきた学生が、社会ではスポーツに関連した職業に就かないことも多いが、それまでに培ってきた能力、例えば目標に向かって繰り返し努力できる能力、チームワークが取れ活発であること等の良さを十分に活かして伸ばす人材育成を目指す。実際、短期留学プログラムに積極的に参加するのはこの学科の学生である。留学するには経済的な課題もあるが、例えばインドネシアでラグビーを教えながら交流してくるプログラムをJICAと連携して作り、旅費や滞在費を支援してもらい短期留学を実現させる工夫をしている。グローバルな世界に打って出られる人材を育成する点で、新しいモデルとしての期待も大きい学科である。新しい分野はその中身が理解されづらいという大変さはあるが、建学の理念を重視しつつも、その時々の社会のニーズを捉え、将来を見据えて学部学科を作ってきたことも高校生から支持される要因の一つである。こうした新しい学部学科のコンセプトは、他大学の模倣ではなく、学内の議論から生まれてきているが、なぜそれが可能なのか。野尻学長は教職員の危機意識だと話す。単科大学として開学し、その数年後には、学生は集まっていたものの倒産の危機もあった。新しく入った教員に「先生は教員ではあるけれど、一人ひとりがこの大学の経営者です。そういう考えを持って自ら主体的に経営していかない1965年開学 経済学部経済学科開設(龍ケ崎キャンパス)1970年経済学部経営学科開設1988年社会学部社会学科開設1993年社会学部国際観光学科開設1996年流通情報学部流通情報学科開設2001年法学部ビジネス法学科、自治行政学科開設2004年新松戸キャンパス開設、キャンパス選択制度の導入2006年スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科開設2008年経済産業省「産学連携人材育成事業」に採択2017年スポーツ健康科学部スポーツコミュニケーション学科開設2018年文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」に採択表1 流通経済大学の沿革建学の理念を重視しつつ将来を見据えて進化を続ける改革を支える教職員の危機意識
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