カレッジマネジメント224号
72/90
72リクルート カレッジマネジメント224 / Sep. - Oct. 2020定員厳格化、入試改革、そしてコロナ禍受験生の「不安」を解消するコミュニケーション戦略をリクルート進学総研 所長リクルート『カレッジマネジメント』編集長小林 浩 編集長の視点今回の進学ブラント力調査は、例年とは大きく異なる環境下でスタートした。調査期間は、まさに新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、緊急事態宣言まっただなかの4月。全国の小中高校では、3月2日から休校が続いている状況であった。昨年の状況を振り返ると、2016年から続く大規模大学の定員厳格化により、高校生の進路選択に「安全志向」が現れる結果となっていた。定員厳格化により私立大学の難化が進んだことで、入試難易度で2段階程度落として受験するような傾向も見られ、高校生の言葉を借りると、まさに“偏差値が信用できない”状況であった。今年の高校3年生が対象となる2021年度入試は、『入試改革元年』となる。大学入学共通テストが導入されるとともに、各大学の個別選抜も、各大学のアドミッション・ポリシーに基づき学力の3要素を重視したものに変わっていく。昨年末には大学入学共通テストにおける英語4技能や記述式の導入が見送られ、高校現場には大きな衝撃が走った。初めての大学入学共通テストは、出題傾向が読めず、対策がとりづらい状況となるなかで、さらに3月以降追い打ちをかけるように、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、生徒は学校に通学さえできないという状況になったのである。今回の調査結果を見ると、そうした影響を如実に受けていることが分かる。調査結果から見えた大きな傾向は以下の2点である。<進学ブランド力調査2020の結果から見えた傾向>(1)大学入試改革、特に新たに導入される大学入学共通テストへの不安等もあり、東名阪ともに国公立よりも私立志向が高まっている。(2)2016年からの定員厳格化の影響を受けての「安全志向」に加え、入試改革への不安から志願度ランキング全体において「超安全志向」が反映される結果となっている。今後、さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響から生じる5つの不安により影響が出ると想定している。①学力不安…2カ月以上の休校での学力低下、模試中止等で学力把握ができない②新型コロナウイルス長期化への不安…大学入学共通テストや一般選抜実施への不安から、年内入試である総合型選抜、学校推薦型選抜へのシフトが進む可能性③各種大会・資格試験の中止、規模縮小への不安…学校推薦型選抜、総合型選抜への出願資格、調査書等に影響。文科省は受験生に不利にならないよう大学に十分な配慮を要請④家計の状況変化への不安…雇用状況の悪化による家計の急変等が進学先選びに影響を与え、地元志向が高まる可能性⑤志望分野への不安…デジタル化の進展により、情報系は文系・理系を含め増加傾向に拍車。今後、観光、国際、
元のページ
../index.html#72