カレッジマネジメント224号
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75リクルート カレッジマネジメント224 / Sep. - Oct. 2020属を異にする学生が一緒になって課題を見つけてグループワークを進め、最終的にそれを自分の考えにまとめていきます。思うだけなら誰にでもできますが、その思いを議論のなかで自分の考えに発展させ文章化していくトレーニングです。これを1学期目に15回繰り返していきます。私も本学に着任してからずっと「自立と体験1」の授業を担当してきたのですが、学部学科ごとの初年次教育の効果もあり、入学後の1学期間で学生が見違えるように成長します。「自立と体験1」の学生アンケートにも、他学部・学科の人と交流するのが面白い、自分の書く力の向上を実感するという声が少なくありません。この「自立と体験1」を支える柱が、2年生以上の学部生SA(スチューデント・アシスタント)です。SAは、学内インターンシップと給付型支援を組み合わせた「明星大学勤労奨学金」を受給しています。毎年募集人数を超える応募があり、2019年度実績で合計97名の学生がSAとして活躍してくれています。SA達は既に「自立と体験1」を履修していますので、新入生のケアが実に上手です。「教育の明星大学」のイメージが定評に「自立と体験1」は2014年度に日本高等教育開発協会(JAED)の Good Teaching Award を、2019年度には初年次教育学会第1回教育実践賞の最優秀賞を受賞しました。数年前から見学希望者が増えており、お役に立てばと他大学に公開しています。「『自立と体験』を受けたいから明星大学に進学したい」という高校生の声も届いており、やりがいを感じています。これらの教育改革を通じて教職協働の意識が根づき、志願者数3倍増、帰属収支改善等の成果が得られました。ここ数年の入学生の質の向上にも目覚ましいものがあります。なかでも教育学部は、2019年度の小学校教員就職者数で全国私立大学3位(大学通信社調べ)になるなど、本学のイメージを高めています。開学間もない1967年から50年以上の歴史を持つ教員養成の通信教育課程も、本学の大きな強みです。【学び続ける力】と【協働する知性】を兼備した人間の育成2012年に中央教育審議会大学教育部会が「予測困難な時代」という言葉を使いました。コロナ禍のただなかにいる私達は、まさに先々は「予測困難」と強く感じざるをえません。しかし、であるからこそ、あえて将来の社会を予想し、「だからこの教育サービスや研究が必要なのだ」と主張し実践することが、今、大学に求められていると私は考えています。新しい時代では、ほかの分野の人々と協働できる専門人が求められていくことでしょう。社会価値が「自分一人で」から「誰かと一緒に」に変わるにつれ、大学入学の基準も偏差値から大学とのマッチングへと移行していくと予想されます。こうした新時代において「協働力を発揮する人間」には、【学び続ける力】と【協働する知性】の兼備が必要です。その達成に向け、明星大学は「専門学知(セントラル)の修得」と「交わり広がる学修(クロッシング)の蓄積」の両方を可能にする教育の仕組みを考えています。それを広くカリキュラム化し、本学を特徴づける教育パッケージとして受験生に、また社会に示そうと計画中です。全ての専門教育課程で教育テクノロジー(EdTech)を標準装備化するために、ICT基盤の強化・多様化を進めています。「人生100年時代」を生きることになる学生の「学び続ける力」の支援基盤として、ライフロングで使えるeポートフォリオも整備中です。卒業後もアクセスしたり利用したりできる、「一生もの」のシステムである点が特徴です。それは、明星大学は学生・卒業生に長く伴走していくという宣言でもあります。明星大学は、“学修者本位の大学”を目指しています。それは、学生一人ひとりのマッチング、学びがい、モチベーションを大切にするということです。学生が「この勉強は難しいけれど面白くてためになる」と笑顔で挑戦する明星大学にしていきたいですね。(撮影 平山 諭)

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