カレッジマネジメント224号
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76大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索する中、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、地域志向教育に積極的な弘前大学の取り組みについて、福田眞作学長にお話をうかがった。1949年の開学以来、青森県弘前市にキャンパスを置く弘前大学は、県庁所在地ではない都市名を冠する珍しい国立総合大学だ。軍港だった青森は、終戦の年に空襲を受けて9割近くが焼け野原になった。戦後、青森にあった医学校や師範学校は空襲被害のなかった弘前市に移転、旧制弘前高が地域の人口減少だ。とりわけ、弘前大学のある青森県では、人口減少数が全国2位、若年者の人口減少数が全国6位等深刻で、「人口減少と超高齢化が地域経済の縮小を加速化させ、地域経済の縮小が人口減少を加速化させるという悪循環」(福田学長)も危惧されるという。将来の地域創生人財と期待される学生の特徴を福田学長は、「偏差値とか成績がどうというより、とても素直な学生が多いという印象です」と言い、人間力の向上を育成の課題として挙げる。「生きていくうえで必ず出てくる色々な困難に対してどう立ち振る舞うかは、環境の中で色々な問題を見て聞いて考える機会を持つ、それが恐らく人間力の向上につながっていくのではないかと思っています」。弘前大学は第3期中期目標・中期計画(2016年度~2021年度)において4つの戦略を策定した。そのうち、地域の中で「学ぶと働くをつなぐ」観点で大きいのが、COC/COC+を活用した戦略4と、地域の強みである「アグリ・ライフ・グリーン」の発展を目指す戦略1だ。校等との統合で新制大学となったのが弘前大学、という設立経緯だ。2020年4月に就任した福田眞作学長は、「歴史と名称に表れている通り、本学は弘前という地域と共にあります」と言い、こう続ける。「2012年から2014年にかけて行ったミッションの再定義でも、全5学部7研究科が地域活性化の中核的拠点となる決意を固め、当時の学長・佐藤 敬のリーダーシップのもとで、改革に取り組んできたところです。佐藤前学長は、2014年に『地域志向大学改革宣言』も行い、地域を志向した大学改革を推進していくことを内外にはっきりと表明しています。その一方で、本学で育成される人材や地域の課題解決に向けた教育研究によって得られる成果は、決して地域限定ではなく、世界に通用するものです。それを示す『世界に発信し、地域と共に創造する』というスローガンも、本学は掲げています」。今、地域の大学が改革を進めるにあたって、常に直面する課題の一つリクルート カレッジマネジメント224 / Sep. - Oct. 202027弘前大学地域との関わりの中で学生が成長する大学を目指す福田眞作 学長「地域志向大学宣言」に基づく大学改革地域人口減少の課題に挑む「オール青森」で取り組むCOC事業
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