カレッジマネジメント224号
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82新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が止まらない。世界では毎日20万人を超えるペースで感染者数が増え、日本時間7月26日までの累計感染者数は約1610万人、累計死者数は64万人を超えている。国内でも、5月26日の緊急事態宣言全面解除後ひと月足らずで、東京都の感染者数が増加。埼玉・神奈川・千葉の隣接3県、大阪、愛知等他の大都市圏に拡大し、さらに全国各地に広がりつつある。7月26日までの累計感染者数は3万666人、累計死者数は998人となっている。この状況により、春学期をオンライン授業中心で乗り切り、秋学期は対面授業と考えていた大学も、難しい判断を迫られている。都内に限れば、秋学期の方針を公表している大学の大半が、オンライン授業を主にしつつ一部対面授業を行うとしており、今後公表予定の大学も同様の方針を示すことが予想される。ただ、春学期と異なるのは、学生がキャンパスに通える環境を慎重に整えつつあるという点である。関西では、対面授業を主にオンデマンドを併用、ネット授業を併用しながら対面授業を再開する等、都内に比べると対面に軸足を移しつつある様子が窺える。ただ、関西圏でも感染者数が増加傾向にあり、この方針が秋学期開始まで維持されるか予断を許さない。これらの動きに対し、感染者数が抑えられている地域では、対面授業を中心にした教育が実施されるものと思われる。秋以降、感染状況の違いにより、教育方法のみならず、課外活動、学生生活、研究をはじめとする諸活動において、地域間に大きな差が生じることが予想される。対面かオンラインかは単純に優劣を比較すべき問題ではないが、同じ大学という機関でありながら、地域間で差が生じた場合、学生、保護者、社会はそのことをどう捉えるのだろうか。このような状況において、大学が第一に重視すべきは、感染防止策を徹底しながら、大学の諸機能を維持し続ける期間が長期にわたることを覚悟したうえで、新常態と呼ぶにふさわしいシステムを整え、定着させていくことである。緊急事態宣言下で実施を余儀なくされたオンラインやオンデマンドによる遠隔授業により、新たな教育の可能性に対する認識が広く共有されると同時に、遠隔授業の課題、対面授業の意義、キャンパス内での活動や交流の重要性が、より具体的に意識されるようになってきた。この経験を新常態にどう活かすかが問われている。第二は、学生、保護者、社会からの様々な要求が増大するとともに、大学の選別・淘汰が加速することを前提に、教育の質をはじめ大学の諸機能を最大限に高める必要があるという点である。18歳人口の減少が続く一方で、大学数や収容力が維持されている現状に対する社会の視線は厳しく、再編・淘汰は当然とする見方が根強い。コロナ禍で企業、家計の収入減少や政府の負担増加が深刻さを増すなか、この傾大学を強くする「大学経営改革」コロナ禍で改めて問われる大学の戦略と組織吉武博通東京都公立大学法人 理事筑波大学名誉教授リクルート カレッジマネジメント224 / Sep. - Oct. 202089地域間で差が生じる可能性がある秋学期の対応新常態への対応と新たな大学像の構築

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