カレッジマネジメント225号
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15リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020特集コロナ禍と2020年の進路選択Part 1 高校の今と進路選択とするかという長期的な視点がポイントになってきそうです。山下 それには、今、高校で生徒達がどんな風に学んでいるかにも、もっと目を向ける必要があるのではないでしょうか。先日、この4月に九州の大学に進学した、東北出身の学生から連絡をもらいました。進学先の大学はオンライン授業に積極的ではなかったようで、自分は何のためにこの大学にきたのか分からなくなった、と。しかし、落ち込んでいるだけでなく、オンライン授業を始めてくれるよう大学に交渉したいからアドバイスをもらえないか、と前向きに行動しようとしていました。この学生の出身校は、自ら課題を発見して解決に取り組む探究学習に力を入れている高校で、そこで主体的に変化に対応していく力が育まれたのだと思います。現在、探究の学びに取り組む高校が増えているなか、探究の醍醐味を学んだ生徒達がいきいきと活動できるような大学であってほしいと願っています。和田 生徒達は、大学の対応の遅れにはとても敏感です。学びたいテーマが学べるかどうかも重要ですが、「そもそもこの大学に行く価値はあるのか」を非常にシビアに見極めようとしていると思います。先ほど、コロナ禍の入学者選抜で大学は「変化対応力のある高校生」を求めているのではないかと言いましたが、高校生もまた「変化対応力のある大学」を求めているのではないでしょうか。危機の局面において、いかに早く柔軟な対応をとって学生を伸ばしていこうとするのか。これまで見えなかった、その大学のあり方の違いが浮き彫りになったと感じます。小林 なるほど。これまで目立たなかった大学にとっては、今回を機に際立つ対応が見られると、進学先として大きく浮上する可能性もあるということですよね。変革のときは受験生にとって「大逆転を起こすチャンス」というお話も出ましたが、現在の大学に対しても同じことが言えそうです。これを機に発展する大学と、変化に対応できず旧態依然を続ける大学。どちらに向かうか、今まさに岐路にあるのかもしれません。本日は高校現場から貴重なご意見を頂き、ありがとうございました。座談会を終えて政府の休業要請からの高校現場の混乱ぶりが、リアルに伝わってくる座談会だった。まさに、高校におけるデジタル化の遅れが、コロナ禍において顕著に表出した。これを、チャンスと捉えて新たな取り組みにチャレンジするか、どうしようもないと諦めるかで、わずか数カ月の間だが、生徒達へのサポート体制に大きな差が出たと思われる。ひと言に高校といっても進学校と多様校では、違いが出ていることもわかった。多様校では3年生から進路指導が本格化するため、2カ月にわたる休校が現3年生に大きな影響が出ている。一方、進学校では大半が2年生までにオープンキャンパスに参加することから、今年参加できなかった来年度受験生への影響が大きそうである。印象的だったのは、「高校は変化に対応できる大学かどうかを見ている」という言葉だ。コロナ禍の危機対応を契機に、改革が進む大学か旧態依然としたままの大学なのか、高校からも注目されている。(小林)(文・藤崎雅子)探究の醍醐味を学んだ生徒達がいきいきと活動できるような大学であってほしい

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