カレッジマネジメント225号
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技術革新により、産業構造や働き方が劇的に変化することが予想されます。本連載では、領域×Technology=「X Tech(クロス・テック)」に着目し、産業の大きな変化の兆しを捉えていきます。取材協力岸 浩稔氏 野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 主任コンサルタント中原悠悦氏 野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 コンサルタント#10 AdTech(広告とテクノロジー)インターネット広告市場が拡大中──AdTech のトレンドは「送客から態度変容へ」で変わる産業新型コロナ拡大は、日本経済に大きな打撃を与えた。広告業界も企業の業績悪化により、テレビCMや交通広告などの広告費削減のダメージを受けている。だが一方で、コロナ禍における新しい生活様式の推奨により、ECサイトや動画配信などオンラインサービスを利用する人が増え、インターネット広告が拡大している。2019年時点では5%前後の成長率が見込まれていた市場規模が、それを上回る成長を牽引している。特に、動画広告の進化は著しいものがあるという。「インターネット広告は、自社サイトに誘導するバナーやリスティングがこれまでの主流でした。しかし最近は、動画やSNS、オウンドメディアで商品やサービスの認知・理解や購買意欲を高める“態度変容”タイプの広告がトレンドになっています」(中原氏)広告のクリエイティブもリッチ化が進み、広告単価も上がっている。その背景には、テクノロジーの進化による革新がある。5Gによる通信速度の向上が動画広告の表示をスムーズにし、来店予測や購買データに紐づいたスマートフォン広告など、AIやデータアナリティクスを活用した広告配信の自動化・最適化を実現しているのだ。また、テレビとネット広告の連動や、位置情報を活用したスマホアプリのクーポン配布、サイネージや電車内広告に動画広告を配信するなど、リアル広告とのメディアミックス事例も増えつつある。実際に販売効果も出ている。個人に紐づいた効果測定も可能になり、自社のマーケティング戦略に活用するデジタルマーケティングも増えている。だが、これからのAdTechで求められるのは、データサイエンスやクリエイティブスキルだけではないと岸氏は強調する。「これだけ社会の変化が早いなか、単にデータを分析するだけではなく、ビジネスの観点を持って考える力で、広告効果の向上を図ることが重要です。常に新しい技術やトレンドの変化をいち早くつかむことも必要とされ、情報収集力や学習意欲なども欠かせません。そして、市場構造を理解し、横断的に広告手法やクリエイティブを考えられる力、スポンサー企業を動かす折衝スキルが求められます」(岸氏)インターネットの世界だけでなく、日常生活にも浸透するAdTech。新たな市場を開拓する探求心や好奇心も、未来の広告を創るコアスキルとなりそうだ。(文・馬場 美由紀)ディスプレイ広告03,0006,0009,00012,00015,00018,00021,0002025年2024年2023年2022年2021年2020年2019年2018年出典)2018年は電通による実績値、内訳と2019年以降はNRI予測(億円)14,48015,78316,88817,90118,79619,54820,13520,53712,2495,6352,65311,9275,5802,62711,3875,5852,57710,7575,5362,50310,0585,4362,4079,3075,2872,2948,5245,0942,1667,6554,8182,007+5%ノンプログラマティック広告リスティング広告インターネット広告媒体費の将来予測

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