カレッジマネジメント225号
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28リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020突然に始まった新型コロナウイルス感染症は、人が集まることができないという大きなダメージをもたらした。特に、高校生に大学を見せるオープンキャンパス(以下、OC)は、どの大学も工夫を凝らしてキャンパスの魅力を訴えてきたが、今年はやむなく中止としたところが続出した。そのなかで斬新なOCをWebで開催しているのが、東洋大学である。Open Campus Web Styleと命名されたページを開くと、学長挨拶に始まり、大学の概要説明、学部紹介、キャンパスツアー、外国人留学生ガイダンス、学生生活等、多岐にわたる大学の活動が動画で紹介されている。十分な臨場感があり、何度も繰り返して見ることができるので、キャンパスにおけるその場限りの説明よりも、大学生活の全貌を細部に至って捉えることができる。Open Campus Web Styleのもう1つの特徴は、入試概要のガイダンス、一般選抜全科目の過去問とその解説が、pdfと動画で掲載されており、高校生がWeb上で受験の傾向と対策を取れることにある。Webの特性を利用することで、必ずしも東洋大学を選択肢としていなかった高校生が、東洋大学を受験校の選択肢に入れる可能性大であろう。東洋大学がOCのWeb開催をいち早く決定できたのは、Webを利用した学生募集に関して10年近くの蓄積があることに立脚している。その主な流れを、表から見よう。2013年に紙の印刷物としていた大学案内をWeb化したのが始まりである。ネットやスマートフォンの普及と相まって、物理的な制約が多い紙媒体からの脱却が可能になった環境面の変化が、その理由の1つではあるが、それだけではない。学生募集戦略の大きな転換が背後にはある。それについて加藤建二入試部長は、次のように説明される。「かつて受験生は偏差値を目安に大学を選ぶ傾向が強かったので、募集広報もそれに合わせたアプローチになりがちでした。しかし2010年頃から、そうした流れから本来あるべき、東洋大学で学びたいという学生に如何にして志願・入学してもらうかが鍵になるといった議論が始まりました。そのため、東洋大学のありのままを見せて伝えることを目的として、2015年から『Web体験授業』の公開をはじめました」。『Web体験授業』とは、教員の授業内容を高校生対象に20分程度の動画にまとめたものであり、既に専任教員の約80%が収録に協力し、その本数は640本を超えている。通常の授業とは異なり高校生が見やすいテーマ・コンテンツを揃える。ベースとなっているのは、高校1・2年生を対象に年2回、大学の授業を受講できる『“学び”LIVE授業体験』という模擬授業体験イベントである。『“学び”LIVE授業体験』は言うまでもなく、首都圏の学生の参加が多く、提供される授業数は100講座、しかしキャンパスに1日いても受講できる授業数には限りがある。一方このイベントを経由した出願率は高く、「大学の本質である授業がコアコンテンツとなって志願度を上げることができる手応えは大きい」と加藤氏は言う。他方で、ネットで公開される『Web体験授業』とすることで、どこに居住している者も高校生でなくても、ネットに繋がりさえすればいつでも好きなだけ視聴できる。現在1東洋大学1CASEPart2大学の募集コミュニケーション加藤建二氏学生募集戦略の転換:大学を伝えるオンラインOC:コロナ禍への対応リアルでできないことをバーチャルに完全移行Web集約  学びを魅力のコアに

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