カレッジマネジメント225号
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33特集コロナ禍と2020年の進路選択Part 2 大学の募集コミュニケーションリクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020やりとりして、その雰囲気を感じ取ってもらう。用意されたコンテンツではないからこそ刺さるのです」(周東氏)。オンラインでコンテンツを一方的に配信するだけでは得られない双方向感、アーカイブ配信では得られないライブ感。重視するのはそうした空気感だ。徹底したユーザー目線でコンテンツを設計し、どういうニーズにも応えられるように努力している。オンライン利用者には「従来リアルで来ていた層がオンラインで来ざるを得なくなった」場合と、「従来リアルだと来られなかった地方学生がオンラインだから参加できるようになった」場合の2つがある。緊急対応が機会となる層が一定数いるのである。もともと実践の地方出身者比率は25%と、他の同規模女子大よりも5ポイント程度高いが、「今後もオンラインは地方志願者向けに継続したい」と周東氏は言う。6月からはオンライン個別面談もスタートし、平日は毎日学生と職員が相談1件当たり60分程度時間をかけて対応する。我が子と大学生が話をしている様子を見て保護者が安心するケースも多いという。大型イベントで得た多くの情報を自分ゴト化するのにはある程度の壁打ちが必要だ。実践はオンラインでそうした場を設けることで、受け身で情報を得るだけでは上がりづらい志望度を担保しているのである。今後の方向性について、「入試方式に応じたコミュニケーションを丁寧に設計すること」と浜中氏は言う。課題は3つだ。まず1点目は、オンラインは歩留まりが読めないこと。「リアル並みの接点量を確保していても、リアル並みに志願につながってくれるかは未知数」と周東氏は言う。2点目はオンライン完結の難しさだ。「オンラインで情報検討しても、最後は見て決めたいというニーズにいかに応えられるか」(浜中氏)。どのタイミングでどんな場作りが良いかは入試方式ごとにも異なるであろう。3点目は、オンラインの特性として他校との差別化がリアルよりも難しい点だ。「どこも似たような情報を揃え、立地の差異や対面での関係性構築ができないとなると、オンラインはどうしても埋没しやすい側面がある。大学としての独自性をどう磨くかが重要」と周東氏は言う。では実践の独自性とは何か。浜中氏は学生成長と社会連携の2点を掲げる。実践には成長度合いを可視化し、学生1人ひとりの状況に応じて支援する「J-TAS」という仕組みがある(図参照)。大学での経験が個人の成長にどうつながったか可視化し、教育の質保証にもつながるもので、サポーターとなる教職員一丸となり、学生の入学後の成長を支援する。もう1つの社会連携は特に今後強化する方向性だが、学んだことを社会で「実践」するために、企業や自治体との連携学習を増加し、「どの学部学科でも外部と圧倒的に多くコラボレーションしている大学」というブランドを目指す。将来的には卒業後のキャリア支援も視野に入れている。渋谷キャンパスは最先端の企業連携、日野キャンパスは地域の社会課題に向き合うというキャンパスごとの顔つきも強化していくという。そうしたスキームで活躍する学生がJ-STAFFとして広報活動に加わることで、これまでとは違う層の獲得につながるのではないかという狙いもある。コロナ禍において積極的に打って出つつも、実践らしさから軸足をぶらさず、徹底的に高校生目線を貫く。実践のチャレンジは、課題や危機を機会と捉えていかに挑戦し、短期にPDCAを回せるかが本質であるように感じた。(文・鹿島 梓)カリキュラムマトリクス学修計画学修ルーブリックサポーター成長診断テスト(PROG)    のさまざまな実践経験の場成長と課題を実感フィードバック自分を知る図 J-TASの仕組み大学の独自性を今まで以上に意識しなければ埋没するのがオンライン領域

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