カレッジマネジメント225号
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37特集コロナ禍と2020年の進路選択リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020小林 そういった春先からの動きがある中で、リクルートワークス研究所が実施した「大卒求人倍率調査」の結果について、佐藤さんからご説明頂けますか?佐藤 今年は、この調査もコロナの影響によって例年より3カ月ほど遅れて実施することになったのですが、全体としては20年3月卒の求人倍率1.83から、21卒においては1.53倍と、0.3ポイント減となりました(図1)。先が読めない状況下で新卒採用は控えるという傾向ではあるものの、ワークス研究所としては、21年卒に関して「水準を維持できる」という温度感で捉えています。よく、リーマンショック後やバブル崩壊後の求人倍率と比べて語られることが多いですが、当時とは状況が異なります。バブル崩壊もリーマンショックも、経済的に全方位に大打撃という状況でした。コロナ禍でも最初は同じ状況を想定しましたが、様子を見ていくと、大打撃を受けている業種・業態と、リモートワークの導入も含めて「工夫しながらやっていけば影響は軽微」という業種・業態とに住み分けされてきたと思うのです。小林 就職超氷河期と言われた00年が0.99、リーマンショック後、東日本大震災後の12年が1.23、21卒が1.53。想定していたよりは売り手である学生にとって厳しくないだろうという捉え方なのでしょうか。佐藤 そうですね。メディア等では必要以上に「リーマンショック並みだ」「バブル崩壊後並みだ」と煽り立てる傾向が強いように思います。今回いろんな企業の対応を見ていて思うのが、バブル崩壊後とリーマンショック後に起こったことから、皆さん学んだ思っています。バブル崩壊後に多くの企業で軒並み新卒採用がストップし、その世代がすっぽりと不在になっているのです。特に毎年新卒を採り続けてピラミッド構造を作ってきた大手企業ではバランスが崩れ、中途採用でもうまく埋めることができていない。ここ10年ぐらいその影響が出ているのです。さらにリーマンショック後も同様のことが起きています。しかし今回のコロナ禍ではそういった同じ過ちを繰り返さないようにと、即断即決をせずに先行きを見定めている印象が強いです。小林 従業員規模別や業種・業界別で見るとだいぶ濃淡があるわけですね。就職情報関連企業エン・ジャパンにおいて新卒採用支援事業に約11年間在籍。就職サイトや合同企業説明会、採用ツールの企画営業、採用コンサル以外に、新卒採用市場がめまぐるしく変わる中、スカウトサービス、新卒紹介などの事業の立ち上げ、企画、営業、運営に携わる。独立。独立後は、企業の新卒採用のコンサルティングや採用アナリストとして活動。コンサルティング企業から、2003年IT企業アイ・エム・ジェイに転職し事業会社人事としてのキャリアをスタート。7年半の在籍中、採用、育成、制度運用、組織開発、労務などを幅広く担当し、後半はチームマネジメントを経験。以後、IMAGICAグループに移りグループ人事、ライフネット生命にて人事総務部長、電通デジタルにて人事部長を歴任。2020年4月より現職。採用コンサルタント/アナリスト谷出正直 氏リクルートWorks 編集長佐藤邦彦 氏リクルート進学総研所長カレッジマネジメント編集長小林 浩 打撃の大きい業種と、リモートワークの進化等で影響が軽微な業種・業態との間に差21卒大卒求人倍率から見えること

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