39リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020特集コロナ禍と2020年の進路選択Part 3 採用市場と大学の就職・ キャリア支援に、「困った学生を救済します」という企業が何社か出ました。これまでの不足をリカバーしようという動きでしょう。また、コロナの状況下で伸びたインターネット系の企業が、去年よりプラス100人採るといった動きもあります。小林 やはりばらつきが大きいということですね。佐藤さん、業種別で見て何か傾向はありますか?佐藤 業種別では、流通業が11.04倍から7.28倍へ3.76ポイント低下と下落幅が結構大きいですね(図3)。小林 コロナ影響で物流や宅配サービス等の求人が増えているのではないかと思ったのですが。佐藤 流通業の中でもアルバイトや非正規雇用の求人は増えていると思いますが、この調査に現れるのは大卒求人市場のため、その動きは反映されないのです。コロナ禍で、流通業以外にもエッセンシャルワークやインフラを支える現場の人手が足りないという報道が多く見られましたが、そういった仕事に就業する方々と、大卒の人材市場が一致しているわけではないので、現場の緊迫感と数値は必ずしも一致しないのです。小林 なるほど。エッセンシャルワークということでは、医療関係の採用についてはいかがでしょうか。看護師をはじめ人材不足が叫ばれているという面と、病院自体の経営難で採用は控えるといった両面があると思うのですが。谷出 医療系は、資格保有者という限られた人の市場なので、マスメディアのニュースになりにくいのかもしれませんが、「手に職」がつくという魅力や、将来の安定性に対する保護者の期待もあって、その道への志望者は増えていると思います。ですが、労働条件の過酷さという面と、スキルさえあれば転職が可能という面から人材が定着しないという課題はあります。良い職場環境を作るために病院側の努力も含めて、病院の採用担当が疲弊しているケースはよく聞きます。佐藤 コロナの状況を経て、手に職志向や安心・安定志向が高まってくると、医療関係のような分野においては、大学にとって専門学校が競合化する可能性は強くなると思います。明確な目的意識を持って専門学校で学び、資格を取った人のほうが就職先があるという状況が色濃くなってくるのではないでしょうか。小林 他に大卒の新卒採用に二の足を踏んでいるとか、アクセルを踏んでいると感じる業種はありますか?谷出 やはり航空・鉄道・旅行・観光業や、外食・飲食、百貨店、自動車や自動車部品、鉄鋼、イベント業やエンターテインメント業等は採用を止めたり、半減したりという動きがありました。学生の人気だった航空や鉄道、旅行業界等が軒並み採用を止めたことが象徴するニュースとして流れると、まるで全業界の新卒採用が止まったかのようなイメージを学生は持ちますよね。図3 業種別 求人倍率の推移(倍)7.2811.046.011.600.340.430.280.281.976.21024681012142021年3月卒2020年3月卒2019年3月卒2018年3月卒2017年3月卒2016年3月卒2015年3月卒2014年3月卒2013年3月卒2012年3月卒2011年3月卒2010年3月卒2009年3月卒2008年3月卒2007年3月卒2006年3月卒2005年3月卒2004年3月卒2003年3月卒2002年3月卒2001年3月卒2000年3月卒1999年3月卒1998年3月卒1997年3月卒1996年3月卒金融業サービス・情報業流通業製造業建設業建設業・製造業他
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