カレッジマネジメント225号
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40リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020佐藤 IT関連企業や金融業等は影響が軽微で、特にIT系は、リモートワークが進んだことで、業績はあまり変わらなかったという経営者の声が強いですね。谷出 むしろネット系も含めたITエンジニア人材の採用は、今回のオンライン化が一斉に進んだ中であらゆる業界で採用ニーズが高まりましたよね。小林 業種だけではなく、職種にも影響が出てきているということですね。谷出 「理系」という大きなカテゴリーと、なかでも情報系や機械・電子系、建築・土木等専門性を持っている人への採用ニーズはより高まっています。全体の有効求人倍率は0.3ポイント下がったけれど、理系だけを括ってみたら逆に上がっている感じです。つまり学生側から見たときにその落差は一律ではなく、「あなたはそういう力を持っているんですか」と問われたときに、「持っています」と言える学生は、選択肢を持っている状況にあるということ。選べる人と選べない人の格差が起きているというのが、今の新卒の状況と言えますね。小林 それでは、次の22卒採用にコロナウイルスが与える影響についてはどうお考えでしょうか。佐藤 予測は難しいですが、全体の求人倍率の状況から語ることは意味が薄れていて、業種や業態ごとに見ていくべきだと思います。インフラ系や観光系、飲食・外食系、エッセンシャルワーク等は、今の厳しい状況は変わらず続いていくだろうと思います。また一方でITや情報系は、ピンチをチャンスと捉えて伸び、より優秀な人材が入って世の中を支える、という構図になっていくでしょう。小林 リーマンショック後やバブル崩壊後とは、明らかに違うことが起きていると佐藤さんは見られているということですね。谷出さんは22卒採用の状況についてどう推察されていますでしょうか?谷出 大企業の人事の方に来年の計画を聞くと、「今年よりも減らす」という回答が「増やす」よりも多いですし、その入口であるインターンシップの受け入れ人数も去年より減らす傾向にあるので、21卒よりも採用数が減ってもおかしくないとは思います。小林 通常であれば、大学3年生は夏にはインターンシップに参加しますよね。今年の実施状況はどうだったのでしょう?谷出 夏の受け入れをしない企業が増えたのと、インターンシップと銘打ちながらも、就業体験というよりオンラインで会社説明会や企業からの情報発信をするような企業が多く見られました。小林 大学のキャリアセンターは、インターンシップについてどう捉えたらいいのでしょうか?谷出 就職活動は、「早く動く学生が優秀だ」とよく言われますよね。それも確かにあると思います。ただ、社会人が学生の優秀さを判断する観点としては、結局、社会のルールや仕組みを知っているかどうかが大きいと思うのです。3年生の時から社会人に会い、社会人と普通に会話ができる状態で面接にも臨めれば、優秀だと判断される可能性が高いわけです。だから、情報収集ができて、社会人生活への移行をスムーズにするために、インターンシップをはじめ多人も企業も「選べる側」と「選べない側」がより明確に分かれて格差が広がっていく。21卒より「採用を減らす」が「増やす」を上回るが、IT系ではより優秀な人材を積極的に求める勢い22卒以降の採用市場はどうなるのか?

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