カレッジマネジメント225号
41/66

41リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020特集コロナ禍と2020年の進路選択Part 3 採用市場と大学の就職・ キャリア支援様な機会を提供するということは良いことだとは思います。佐藤 ただ、社会を知ると言っても、例えば挨拶や身だしなみといった社会人の基本的なルールを知ることはあくまでも小手先の話。確かにこれまでは企業もそういった部分も含めて新卒採用をしてきましたが、今後はオンライン上の仕事が主流になり、仕事のパフォーマンスそのものがより問われるようになるため、採用においても、学生が身につけた本質的な力そのものに目が行くように変わると思います。つまり、「この学生は、どんなスキルを、どのレベルで身につけているのか」という基準で判断する方向に向かうでしょう。ですから、大学としては、学生が「自分にどのようなスキルが身についたのかを明確に言える状態」にすることがより大事になると思います。小林 短期的にに見ると、今の大学生達は本当に不安を持っていると思います。大学が目の前の学生支援のためにできること等、お考えになっていることをお聞かせ頂けますか?谷出 今母校で、同窓会とキャリアセンターが一緒になり、学内に卒業生を呼んで社会人の話を聞く会を定期的に実施しています。同じ大学の複数の先輩から、学生時代に取り組んだこと、これまでのキャリアについてどのように意思決定してきたのかといった話を聞くことによって、自分の核となる価値観が作られるのではないかと考えています。単に「考えなさい」と投げっ放しにするのではなくて、考えるためのきっかけ作りを大学が行うことは必要だと思います。佐藤 私は学生支援のポイントとしては大きく2つあります。1つはまず、目の前の勉強にしっかり取り組むことが未来につながることを伝えてほしいです。ただしそれは良い成績を取れという意味ではありません。興味があることを自分の価値観を軸に見極めて、面白いと感じられたものについてしっかり突き詰めるということです。そしてその先に、社会でどんな活躍ができるのか妄想を巡らせてほしいと思います。もう1つは、「1年生や2年生はインターンシップに参加できないんですか」という学生がいますが、社会を知ろうと思ったら、アルバイト等を通じてでもそれは可能です。とにかく1、2年生のうちから勉強と並行して社会と積極的につながれるような状態にすることが、大学の役割だと思います。小林 コロナ禍でスケジュールが変わったから、手法が変わったからということではなく、本質的なところは変わらないということですね。小林 先ほどから今までのポテンシャルによるメンバーシップ採用から、いわゆるジョブ型採用へと変わってくる、コロナによりその流れが加速するという話が出ていますが、どういった背景があるのでしょうか?佐藤 今後リモートワークが主流になると、従業員一人ひとりの異なるスキルやパフォーマンスを鑑み、それに応じた仕事をアサインするというリモートワークマネジメントが不可欠になります。そのため、これまでのような曖昧な採用、曖昧な仕事内容、曖昧な契約ではたちゆかなくなり、よりマネジメントが具体化していく流れが起きると予想しています。谷出 やはり人も企業も「選べる側」と「選べない側」に明確に分かれていくと思います。スキルや能力、実績・経験がある人は、自分がこれをやりたいのでやらせてくれる会社を探すというスタンスで選べるわけです。既に新卒初任給で年俸1000万円以上を提示される人が出てきていますよね。それに対して、総合職でとりあえず雇用されていたい人は、会社から「これをやってください、この金額でよろしく」と受け身で働くしかない。「自分のスキルや経験を高めて低学年の段階から、社会と繋がるためのきっかけ作りをしてほしい「曖昧」が排除され、能力や実績を明確に示せる人だけが「選べる側」に大学がこれから取り組むべきこと今後の採用の在り方と期待される人材とは?

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る