カレッジマネジメント225号
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42リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020いくかみたいなところをやり続ければ自由が待っているし、そうでなければ言われたことだけをやって、いつリストラされるか分からないという人生を送ることになってしまう。企業側も同様に「選べる会社」は、選抜や選考を自由にできますが、「選べない会社」は人口減少の中で採用人数を維持できずに、結果として倒産していく。こちらも二極化が進むと思います。小林 先ほどから議論の根底に流れていると思うのですが、佐藤さんのほうから「大学時代に何ができるようになったのかを明確にするべきだ」というお話がありました。今、文科省の中央教育審議会でも、「学修成果の可視化」は重要テーマとなっています。佐藤 企業で採用に関わっていた観点からいうと、当然自分の選んだ専門領域で何ができるようになったかということはとても大事です。しかしそうはいっても組織ですからドンピシャの専門領域で仕事をしてもらうことは少ないわけです。ですから、企業としては「何ができるようになったのか」という結果とセットで、そこに至るプロセスを見て、目標達成意欲が高い、分析力が高い、客観視能力が高いといったその人の特徴を見たいのです。企業はそこを踏まえながら、専門から少しずらした仕事をやってもらうわけです。従って、単なる結果だけを可視化されても企業側としては不十分なのです。本来はその可視化を企業と大学が共同で作り上げていくべきなのだと思います。小林 理系は「できること」が可視化しやすいけれども、文系は難しいですよね。スキルセットを明確にして、リモートワークにおいてもオファーする仕事を具体化するといった今後の働き方を見据え、大学や学生側はどうすべきでしょうか。谷出 振り返りをちゃんとすることだと思います。授業を受けっ放しではなく、学んだことが社会にどうつながるのかを考えるべきだと思います。学びを通じて気づいた物事の捉え方や考え方、アウトプットするときの論理的思考力等が、1年経過してどう変わったかとか、大学4年間を通じて何を得たのかというのを自分の言葉で語れるようになるのが大事だと思います。先日、ある大学のキャリアセンターの方から、学生がコロナ禍でバイトもサークルも留学も何もできずにいるので、来年以降の選考において「学生時代何に力を入れましたか」という、俗にいう「ガクチカ」のネタがないんじゃないかという話が出ました。それに対して企業はどう考えているんですかという相談を受けました。結果も大事ですが、ステイホームの時間において何を考えていたのか、その考えた中で自分なりにできることを行動に移した人もいて、企業はそこに人の考え方を見るわけですよね。要するに、単純に結果がどうのこうのではないと。「部活で日本一になりました」「…で、何?」というのが社会人。でも学生にとっては、日本一になったことが大事。そこの認識の違いが学生と企業もあるし、伝えてない大学側と企業側のギャップにつながっていると思います。佐藤 今、これだけインターネット上に学習教材があり、コロナ禍であっても人とつながろうと思えばどんなことでもできるわけです。「学生時代に力を入れたことは何ですか」という問いに対して何も答えられるものがないというのはおかしいとは思いますね。谷出 「正解を求める生き方」というか、自分の思考の枠組みの外にあることはやってはいけないと思ってしまう。でも大学は、企業側が準備した仕組みの中で闘うことから抜け出すことを目指すべき。「コロナ禍で学生時代に力を入れたことが語れない」はずはない

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