カレッジマネジメント225号
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43リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020特集コロナ禍と2020年の進路選択Part 3 採用市場と大学の就職・ キャリア支援社会において仕事は全て正解がない。正解がない中で納得解を創り出すことを急に社会で求められたり、就活の時期になって急に気づけと言われても気づけないと思います。小林 大学の就職支援についてまとめると、コロナを機に、何ができるのかを明確にできることが求められるが、単なる「結果」ではなく、そこに至るまでに自分の頭でどう考え動いたのかが大事であり、大学は学生にその視点を持てるように支援することが必要ということでしょうか。佐藤 そうだと思います。さらに言えば社会人になってからも人は成長します。ですから、「大学生のうちに何かできることを作っておかないと就職がない」といった捉え方は少し違うとも思います。一番良くないのは、選択をしない、意思がない、価値観がない、といった受け身な姿勢です。自由な学生時代いかに頭を使って主体的にすごすかが非常に大事ではないでしょうか。谷出 この数年の売り手市場の中、複数内定をもらう学生が増え、よりやりたいことができる会社を探したり、配属が約束される会社を選ぶ方向に進みました。その結果、企業側も総合職として提示すると優秀な人が採れなくなり、ジョブ型とか職種型に変えようという動きが出てきました。つまり企業側が変わらざるを得なくなったという変化が起きたわけです。そしてさらに22卒以降の大きな変化は、日常生活そのものがオンライン化している学生が社会に出てくること。学生の情報の取り方が圧倒的に変わってきているのです。好きなもの、興味ある情報はいくらでも調べるのですが、そうではない情報は調べない。つまり学生が就活を始めた段階で、知り得ている情報に影響されるということであり、知られている企業や人気企業はより人気を集め、不人気はより不人気になっていく傾向があるのです。キャリアセンターも、今までと同じ施策をオンラインに置き換えるだけでは、学生が見向きもしないということになるかもしれません。情報の取り方や見方も伝える必要があるのではないでしょうか。小林 学生の情報への向き合い方や視点提供が必要になりそうですね。では最後に、今後の新卒採用や就職活動全体に関して、大学へのメッセージを頂けますでしょうか。佐藤 大学は、企業側が準備した仕組みの中で闘うことから抜け出すことを目指すほうがいいと思います。学生達が、企業側がお膳立てをした就職活動のフレームの中で闘うことなく仕事に就ける状況や、そういった枠組みに捉われない学生の割合を増やしていくことがKPIになればよいと考えています。自分にとってやりたい仕事、面白い仕事を選ぶことができる学生です。そう考えたときに大学は何をすべきかというと、そうした生き方を学生に見せていくことではないでしょうか。もちろん全ての学生に当てはまることではありませんが、その割合を増やしていくことは、これからの大学が目指すべきことではないでしょうか。谷出 私はやはり社会とのつながりをもっと積極的に作ってほしいと思います。大学の方々が、世の中がどう変化しているのか、企業は何を求めているのかといった情報を踏まえたうえで、学生が社会を知るための人脈づくりや、卒業生への働きかけ、寄付講座の開設等、学生に何が提供できるかを考え続けて頂きたいと思います。それから、大学から学生に伝えてほしい部分としては、やりたい仕事だけをしたい、副業をしたい、自由な生き方に憧れる学生も多くなっています。実現するためには、仕事を通じて社会に価値を提供できる力をつけること、そのために自己成長や学び続けることがあることを理解してほしいなと思います。小林 これから変化する社会の中で自分らしい仕事を選べている人を学生が知る機会を作ることが、大学の役割だと言えそうですね。本日はありがとうございました。コロナ禍による新卒採用への影響は、今年よりも来年度、つまり現3年生への影響が大きくなるであろう。特にインターンシップやアルバイトをする機会を持てずにいる3年生は、社会を知る機会が減少し、入社後のミスマッチにつながる恐れがあるという指摘は印象的であった。さらに、就活場面でのオンライン化が進むことで、より「何ができるのか」というパフォーマンス重視に移行するのではという指摘も大学としては気になるところではないだろうか 。(小林)(文・金剛寺 千鶴子)座談会を終えて情報との接し方が大きく変わる22卒以降の学生達

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