カレッジマネジメント225号
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45特集コロナ禍と2020年の進路選択Part 3 採用市場と大学の就職・ キャリア支援リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020従来、日本の新卒採用では、学生が企業の求める職能や採用要件に合うかどうか以上に、「人として合うかどうか」を探るようなコミュニケーションや、フィーリングに基づく判断が企業・学生ともに行われてきました。そのコミュニケーション・判断が、説明会や面接が急遽オンラインに移行するなかでそのまま持ち込まれたために、学生はWebを介した人肌合わせの難しさに気をとられ、「自分は本当にこの会社を志望しているのか?」等についてよく考えないまま内定を取得し、内定後に企業からフォローを受ける段になって初めて、入社後の仕事内容に対する理解を深め、働くイメージを具体的に描く等して入社するかどうかを判断していることが、当研究所の調査から分かっています。本来であれば、対面・Webを問わず、働くことや企業、仕事の内側にある実態を早期に知り、「自分は何をしたいのか」「それはこの会社で実現できるのか」等を考えながら企業を選び、志望動機を高め、入社企業を決めるのが理想ですが、説明会・選考のオンライン化によって「難しい」という声が出てきているように見受けられます。このような変化や課題を受け、大学ができる学生支援には、大きく次の4つがあるのではないかと考えます。1つ目は、学生がオンライン上の選考に慣れる機会を提供すること。授業のオンライン化によって学生はツールの使い方には慣れてきていると思いますが、オンラインで説明会に参加する、選考を受ける、選考の一環としてグループワークに取り組む、といったことは、授業とはまた別のものです。起こりうるイレギュラーな事態の把握も含めて、体感し、慣れておくことは重要です。2つ目は、孤立化する学生の支援です。大学生活の多くのやりとりがオンライン化したことで、就職活動に関する話をする相手や機会を失い、孤立化する学生が増えています。情報交換や悩みの相談ができるオンライン上のコミュニティーを作る等、学生が悩みを吐き出し、前に進むための支援が必要でしょう。3つ目は、学生とのつながりの強化です。21年卒採用・就職においては、合同企業説明会の延期や中止、外出自粛等によってリクルートスーツを着て活動する学生を目にする機会が激減し、「自分もやらないと」と思う機会を得られず、活動開始が遅れた学生が一定数いました。それは、応募締切を逃す、内定を得られないまま4年後期を迎えるといった事態につながります。そうならないように、大学からの情報発信はもちろん、情報を受け取ってもらえるだけの関係構築やつながりの強化が必要です。4つ目は、学生が企業・仕事理解の解像度を高められる情報を企業に働きかけて取得し、学生にシェアすることです。企業との協働プログラム(共同研究、PBL、ゼミ)の件数を増やす、オンラインも含めた企業見学の受け入れや社員との座談会の設定を要請する等、OB・OGやその所属企業の人事部門等の協力を得ながら、学生たちに向けて「働く」「企業」「仕事」といったものの内側にあるものを届けることに力を尽くすことは、これからの学生支援の一つのあり方だと思います。仕事の「現場」そのものも、オンライン上に移行しています。人と自由に会えていた過去は戻らない前提に立たなければ、思考停止に陥ります。今ある環境の中でできることを考え、実践することが重要だと思います。(文・浅田夕香)※1 リクルートキャリア『採用活動中間調査2021年卒』より大学は、変化に対応した学生支援を図2新型コロナウイルスによる影響が収束した場合の2022年卒採用のWeb説明会・Web面接の実施割合わからない対面の割合を増やす2021年卒採用と同等Webの割合を増やすn=83827.4%28.6%13.2%30.7%※回答者全体/単一回答リクルートキャリア『採用活動中間調査2021年卒』

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