49リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020何を勉強したいかを決めてから、2年次に6つの教育ユニット(家畜生産科学、環境生態学、食品科学、農業経済学、農業環境工学、植物生産科学)に分属します。本学の獣医学は、獣医学という学問を学ぶとともに、卒業と同時に獣医師として働ける技術を持てることが大きな特徴です。2012年には北大獣医学部と連携し「共同獣医学課程」を設置しました。双方の大学に入学した学生が同じカリキュラムの下で教育を受け、学長が連名で学位記を出すユニークな制度です。本学としては、貿易の自由化が進む中、食の安全の最前線にいるのが獣医師であり、欧州や北米のように教育カリキュラムの認証を受けた国際レベルの獣医師を養成したいという課題意識があり、EUの認証機関であるEAEVE(欧州獣医学教育機関協会)の認証取得を目指しました。本学の強みである産業動物臨床と北大の強みである200万都市札幌を背景とした伴侶動物(ペット)臨床とが相互に補えるというコンセプトでスタートしました。2015年には馬など大型動物のMRIを備えた「産業動物臨床棟」が完成、2019年12月には取り組みから6年がかりでEAEVEの認証取得を成し遂げました。農学、畜産学においても、「農場から食卓まで」をスローガンに、食の安全・環境・生命の分野で活躍する高度専門職業人を養成しています。なかでも、全学必修の共通教育科目「全学農畜産実習」は、農作物を育て収穫し、家畜を育て屠殺し、学長含め全員が収穫祭で食する教育が、「いのちを4444いただきます」の精神の浸透に繋がっています。環境生態学ユニットは、今一番人気といってもいいくらい「野生動物について学びたい」という女子学生の希望者が多い分野です。大学全体の6割弱を占める女子学生の多くが志望しています。最近は自治体でも害獣管理を非常に重要視し、外来種からの生態系保全にもニーズが高まっているので、ここでは道内の野生動物をめぐる環境の保全、生態系保全をキーワードに学問を進めています。3大学統合で異分野融合教育を提供2022年には、道内の国立大学である小樽商科大学、北見工業大学と本学が経営統合する、新たな国立大学法人「北海道国立大学機構」の創設を控えています。本学は前述の国立大学改革プラン3類型の「地域活性化の中核的拠点」として、全国から学生を集め、5割近くが道内に就職する点から高い評価を頂いています。しかし、農学が進化するなか、限られた教員数で幅広い教養と深い専門教育の両方を提供するには限界があります。この点、小樽商科大はリベラルアーツ系の教員が非常に充実していて、6次産業化に求められる経営感覚も同大学のマーケティングで学ぶことができます。同様に本学には工学の教員が8名しかいませんが、北見工業大とトラクターの研究などの農工連携が期待できます。このように3大学が一緒になることで、異分野融合教育を学生に提供することができるのです。現在、①事務業務合理化・効率化、②文理融合等の連携教育、③遠隔教育、④オープンイノベーション研究の4つのワーキンググループで検討を進めていますが、夢は、例えば北見工業大に入学して本学で卒業できるような、地域で育てる仕組みを最初から作りたいと話しています。なお、2020年に小樽商科大学卒業生が経営する上川大雪酒造との産学連携で、本学構内に教育研究施設を附設した日本酒蔵「碧雲蔵(へきうんぐら)」が誕生しました。このように新たな取組も始まっています。北海道への憧れと自立心を胸に、本学の学生は道外出身者が7割、うち関東以西が5割にも上ります。女子が6割弱、外国人留学生も約70名在学していて、「多様性」を学ぶには最高の環境ではないでしょうか。慌ただしい受験生活を送っているであろう受験生に「多様性のある大自然の中で自分を見つめ直しながら勉強してみませんか」と言いたいです。そして統合によりさらに多様性に富んだ人間を育てられたら最高だと思います。(撮影 本田 光)
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