カレッジマネジメント225号
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50大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索するなか、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、基盤教育(教養教育)を軸とする改革に取り組む岡山理科大学で、柳澤康信学長、秦敬治副学長(教育担当)、森嘉久副学長(学生支援・国際交流担当)にお話を伺った。岡山理科大学が設立された1964年、日本は高度成長期のさなかにあった。地元岡山の水島臨海工業地帯も拡大期にあり、そこで活躍できる人材の輩出を念頭に、建学の理念は「一人ひとりの若人が持つ能力を最大限に引きめ』。実は教員も『まじめ』」と補う。「本学が第一希望ではなかったが、学科は第一希望だという学生が多い。そういう学生の、ここで自分の目的を達成できるとの思いに応えようと、教員もまじめに、学科ごと・研究室ごとに頑張ってきたといえます」(森副学長)。それがともすれば「学科縦割り」として弊害を生んできた面もあるのかもしれない。育成上の課題としてもう1つあがったのが、入学時の自己肯定感の低さだ。秦敬治副学長はその一因として、地元国立大学の「滑り止め」になっている現状を指摘する。「入学して最初の、『この学校に来てよかった』『いい先生たちがいる』というインパクトが大切なのではないかということで、初年次からの教育強化を、専門の先生方にも絡んでもらって進めています」(秦副学長)。柳澤学長が2016年に着任したとき、出し技術者として社会人として社会に貢献できる人材を養成する」とされた。柳澤康信学長は、「設立以来、プラクティカルな人材養成への思いから、社会で活躍できる人材の教育に力を入れてきた歴史があります」と語る。近年、教育学部(2016年度)、経営学部(2017年度)、獣医学部(2018年度、今治キャンパス)と学部新設が続き、現在、7学部、学生数約6700人と、地方では大きな規模の大学になりつつあるが、目指しているのは普通の総合大学ではなく、理工系総合大学だと柳澤学長は言う。「いわゆる文系の経営学部、教育学部でも、理系的なリテラシーも身につく学部として設置しています」。柳澤学長は「本学の学生は、一言で言うと『まじめ』」と、その特徴を語る。言われたことは着実に行う反面、視野の狭さがややある。「もう少し視野を広げて、自分自身の主体性をもって行動をする、そういう学生にしたいと思っています」(柳澤学長)。森嘉久副学長は、「学生の特徴は確かに『まじリクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 202028岡山理科大学基盤教育改革とポートフォリオ活用で成長実感を醸成柳澤康信 学長秦 敬治 副学長森 嘉久 副学長設立以来プラクティカルな人材を養成初年次からの教養教育で自己肯定感を醸成縦割り打破による基盤教育の再構築

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