カレッジマネジメント225号
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56「教職協働」という言葉に象徴されるように、大学において教員と並び、職員の役割の重要性が広く認識され、担うべき業務も広範化かつ高度化しつつある。これを受けて2017年からはスタッフ・ディベロップメント(以下SD)が義務化された。SDは大学運営の基盤を確かなものとするために不可欠な要素となっている。SDの対象には、事務職員のほか、教授等の教員や学長等の大学執行部、技術職員等も含まれるとされているが、事務職員(以下職員)の能力を如何に高めるかが最大の目的であり関心事であることはほぼ共通の認識であろう。他方でいくつかの疑問も浮かぶ。その一つが、そもそも職員に如何なる役割を期待し、どのような業務を担わせたいのかという点である。大学内で共通の理解を得られているのだろうか。また、能力や成果をどう評価するかが明確でなければ、職員は何を目標に自己の能力を高めればよいかわからない。基準が曖昧なままだと組織への信頼も高まらず、貢献意欲を引き出すことも難しくなる。加えて、職員の能力を高めるために何が必要かを突き詰めて考え、体系的な人材育成施策を講じることに、どれだけ熱心に取り組んできたかも問い直さなければならない。大学に対する期待・要求は増すばかりで、国からも矢継ぎ早に様々な政策が示される。大学自身も世界の大学と競うため、社会・地域のニーズに応えるため、志願者を確保して生き残るために、多くの課題に取り組まなければならない。これらの政策や課題は、その背景や本質を理解した上で、個々の大学の状況に応じて、具体的な施策に展開され、実行に移されてこそ初めて意味を持つ。我が国の現状を見ると、このプロセスが軽んじられているように思えてならない。政策で示された制度や他大学の実践例が、未消化のまま導入され、費やす時間と労力の割に効果の乏しい、形ばかりの改革が繰り返されていることを強く危惧する。この改革プロセスの成否の鍵を握るのが職員である。学長などトップマネジメント(以下トップ)の主たる役割は大きな方向を示すことであり、教員に最も課せられるのは自らの教育研究力を高めることである。学外の動向や学内の現状を把握し、具体的な制度や施策を提案し、その実現に向けて学長や学部長を支え、教員の協力を引き出す役割こそ職員が主体的に担わなければならない。改革で注目されている大学は、総じて職員組織の活性度が高いというのが筆者の見方である。改革の進展や組織の活性度を、何をもって評価するかなど検討すべき課題はあるが、両者の関係は以下のように説明できる。理事長や常務理事、学長や副学長が職務を遂行するに当たり、指示したり、報告や説明を受けたりする相手は職員であることが大半である。トップ自らもそれぞれの方法で学内外の情報を得ているが、それだけで意思決定の質を確保することはできな大学を強くする「大学経営改革」職員の貢献度を高めるための課題と方策〜真の「協働」の実現に向けて〜吉武博通東京都公立大学法人 理事筑波大学名誉教授リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 202090改革プロセスの成否の鍵を握るのは職員職員組織の活性化は意識や風土を変える最良の方法

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