58リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020は個人によって異なることが多い。積極的に改革に関わることにやり甲斐を感じる者がいる一方で、安定した労働条件の下、与えられた業務を着実に処理することに満足を見出す者もいる。意識の違いは職員の成長にも影響を与え、ポテンシャルは同レベルと思われる職員の間でも、仕事への姿勢、取り組んだ課題の難度、周囲の助言・支援などにより、獲得する能力に差が生じてくる。個人の考え方や価値観は多様であって良いし、むしろ多様性こそ尊重すべきであるが、年代・階層による意識の違い、個人間で異なる仕事の意味づけや取り組み姿勢、これらを背景に生じる能力差などが、職員組織の運営と人材の配置・育成を一層難しくしていることは明らかである。ここで大学職員に如何なる能力が求められるのかを考えてみたい。下図の下段枠内は、求められる能力を知識、技能、態度の3つに分け、職員組織の現状を踏まえ、特に重視すべき要素をまとめたものである。知識では、広範な領域への興味・関心と担当領域に関する深い理解を挙げている。理解が浅いと上辺だけで仕事をし、応用も効かなくなる。広範な領域への興味・関心は部署を超えた連携・協力の基礎となる。技能については、情報収集・分析に加え、物事を多面的に捉えて、筋道立てて考え、それを的確な文書に表し、簡潔に説明できる能力を重視している。また、業務の生産性を大きく左右するという点でICTを活用する能力の強化も不可欠である。態度に掲げた各要素は、こうあってほしいとの期待も込めたものである。人員抑制と業務量増が続くなか、新たなことに取り組む余裕はないとの声は多くの大学で聞かれる。このような現状において、意欲や好奇心を高め、創意工夫を引き出すことは容易ではない。また、大学でもメンタルな問題を抱える職員は少なくない。能力を超える負荷が原因となることもあるが、相互に尊重し、互いに助け合える環境があれば、状況はかなり改善されるはずである。下図の上段枠内は、業務遂行能力がどのような発展過程を辿るかを5段階で示したものである。「与えられた業務を正確・迅速に処理する」を第一段階(Ⅰ)とし、段階を追うごとに広げながら、「部署を超えた全学的な課題を発見し、その解決に向けた手順と方向を提案する」を最終段階(Ⅴ)とⅤ.部署を超えた全学的な課題を発見し、その解決に向けた手順と方向を提案するⅣ.所属部署の関連領域において新たな課題を発見し、その解決に取り組むⅢ.与えられた業務を自らの問題意識で広げるⅡ.与えられた業務を許容範囲内で柔軟に処理したり、方法を工夫・改善したりするⅠ.与えられた業務を正確・迅速に処理する<求められる能力> 知識、技能、態度を能力の3要素として考える知識 : 広がり、深さ 〜 広範な領域への興味・関心、担当領域に関する深い理解 等技能 : 情報の収集・分析、論理的思考、文書作成、説明能力、ICT活用、コミュニケーション 等態度 : 意欲、好奇心、創意工夫、相互尊重、他者との協働、他者への支援 等職員の職務遂行能力の発展段階と求められる能力<職務遂行能力の発展5段階>求める能力の明確化と到達段階の確認
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