8リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020山下 全国の状況に目を向けると、学校による対応の差が露わになりました。オンライン授業に取り組めず、課題を郵送するだけで精一杯だった学校もありました。そんななか、ある高校では生徒達が「オンラインで授業をやってほしい」と教育委員会に直訴したというエピソードも。生徒達は学びを自分事と捉えて、自分達にできることを精一杯やろうと行動していました。和田 学校がオンライン学習を導入しない理由は様々だと思いますが、私が最も気になったのが「家庭にICT環境がない生徒がいるから」というもの。そのことが、ICT環境を持たない生徒を追い詰めてしまうからです。「あの子のせいでできない」という周囲の視線がいじめにつながりかねません。「全員に等しくできないことはしない」というのではなく、ICT環境のない生徒には代替方法をとるなどして、どうすればできるのかを考えるべきだと思いました。小林 オンライン授業をしたいけれど、管理職が許可しないという例も多かったようですね。和田 他校の先生からは、そうした相談も受けました。人はよく分からないことには否定的になる傾向がありますから、Zoom等のツールを使ったことがないから許可の判断ができないだけかもしれません。しかし、良いものは絶対に広がるはずです。許可が出ず困っている先生には、「管理職に判断を仰ぐのではなく、まずは自分のクラスや教科等でゲリラ的に始めませんか」と勧めていました。また、Zoomの脆弱性を、やらない言い訳にする例も目につきました。不審者が授業に割り込んで妨害する「Zoom爆弾」が世界中に広がったのは確かに問題です。しかし、対面であっても、授業が面白くなければ生徒は別の形で「爆弾」を落とすでしょう。本当の問題は、対面かオンラインかではなく、魅力的な授業を行えているかということ。本質から目を背け、やりたくない理由をほかのことにすりかえてはいけないと思います。山下 各校の事情でスピード感は異なりましたが、「学びを止めるな」を合言葉に必死に対策を考えていた先生がたくさんいたことは確かです。慣れないにも拘わらず、授業動画を100本近く制作して配信したり、生徒の実情に合わせて時間割を工夫したり、様々な対応がなされました。和田 そうしてやってみて、オンラインの便利さに気づくと同時に、教員として本質的な問いを持った先生も多かったのではないでしょうか。これまで当然のように毎朝学校に集まって行っていた職員朝礼も、自宅からだって参加できる。では、なぜ私達は集まろうとするのだろう…と。そんな学校という場の存在意義について、改めて考えさせられる機会になりました。山下 教室に生徒がいるという日常が当たり前ではな突きつけられた、学校の本質本当の問題は、対面かオンラインかではなく、魅力的な授業を行えているかということ変われない理由を、生徒のせいにしてはいけない
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